ねぇ、先生。【名前変換】 (ページ2)

今日:2 hit、昨日:16 hit、合計:176,721 hit

第二話ページ2

次の授業は数学だ。早く用意をしないと。
そう思い、机の中を漁った。が、私が探している数学の教科書とノートは出てこない。

「えぇ……嘘でしょ？どうしよ…」

「なぁに、A。忘れ物でもした？」

前の席の親友、(人4)が話しかけてきた。
こっちの気も知らず、呑気に紙パックのコーヒーを飲んでいる。

はぁぁ、と深いため息を吐いた。
時計に目をやると、10分の休み時間は残り2分。
今から他のクラスの友達に借りに行ったとしても、チャイムに間に合うはずがない。
いや、もしかしたら間に合うかもしれないが。

でも、もういいかなと、借りに行くのは諦める。
そろそろ先生が教室に来るだろうから、正直に数学の用意を忘れたことを話そうと思った。

と同時に、先生が教室に入ってくる。
私は急いで先生の元へ向かった。

「先生、あの、すみません。数学の用意を忘れてしまいました」

「分かった。教科書は隣の人に見せてもらうなりしてくれ」

「はい、本当にすみません」

もう一度謝り、深く頭を下げた。
すると後ろから、「ちょっと退けてもらってもいいかな？」と声が聞こえた。

「ああ……なんかごめん」

声をかけてきた女子生徒にも謝ると、私は窓側のいちばん後ろの席に戻る。

まただ。
またあの先生は、生徒たちに囲まれている。

数学担当の(人3)(人2)先生。
顔が良くて、背も高い。そしてゲームが好きらしい。
女子生徒だけでなく、男子生徒からも人気だ。

それから授業の教え方が上手である。
何もかも恵まれている人だ。
あんなにかっこいい先生を、皆が放っておくわけがなかった。

毎日先生は生徒たちに囲まれている。
こうして教室にいる時も、廊下を歩いている時も、帰りに校門に立って挨拶をしている時も。

さすがに先生も迷惑しているのではないかと思ったが、それとは真逆に先生は嬉しそうに、生徒たちと会話している。

ああ、だからか。
だから生徒たちから好かれるんだ。

でもまぁ、私とは住んでる世界が違う人だから。
なんて思いながら、休み時間は残り30秒。授業が始まるのを待っていた。