【APH】空模様、恋模様。【短編集】 (ページ33)

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孤独な花（瑞）【学パロ】ページ33

ちらちらと雪が舞う中、私は花を眺めていた。この寒い2月に外に花が咲いている、ということが珍しく、とても興味を引かれたのだ。鈴蘭にも似ているような気がしたが、また違っていた。白くて小さい壺のような形の花が、たくさん集まって咲いている。
｢エリカだな｣
いつの間にか、隣に人がしゃがんでいた。落ち着きのある雨の色の瞳、お月様のような金の髪、きっと結ばれた口許。近寄り難い雰囲気の男性、同級生のバッシュだった。
｢花の名前ですか｣
私が聞けば、彼は小さく頷く。
｢そうだ。正確にはスズランエリカである｣
通りで似ているわけだ。私がじっと花を見つめていると、彼は続けた。
｢英語ではheathヒースと呼ぶ｣
｢荒野、ですか｣
こんなに可愛らしいのに、荒野？その問いに彼がすぐ答えてくれる。
｢エリカは荒野に咲く低木だ、それがそのまま名前になったのだ｣
彼の博識に感心しつつ、私は可哀想だなと思った。
｢何もない荒野に、たった1人で生えるんですね｣
｢だから、花言葉は''孤独''なのである｣
孤独。たくさんの花が集まっているのに、孤独。それってなんだか、
｢私みたい｣
｢……どういう意味だ｣
ぽろりとこぼれ落ちた言葉を、彼が掬いあげる。応えを待っていた。
｢だって、群れているのに孤独なんでしょう。私と一緒。クラスで仲間はずれにならないように、一生懸命人の輪に入って、沢山集まっているのに、孤独なんです。寂しくてたまらないんです｣
エリカを見つめながら黙って聞いていた彼は、そうか、とだけ言うと私の方を見る。そして、ふっと笑った。
｢群れる必要などないのである。群れるのは自分に自信がないからであろう。集団に属すれば安心するからであろう。それは友人でもなんでもない｣
図星だった。居心地なんて良くないのに、無理に個性を繕って。そんな自分が嫌いなのも、自分自身が知っている。俯いてしまった私をよそに、彼は続ける。
｢自分を偽るな。声を上げろ。理解し合えずとも構わん｣
無骨な言葉に反して、その声音は優しかった。けれど、その言葉は真っ直ぐで揺れない。
｢お前はお前であろう、A｣
｢……そうですね｣
悩みも、孤独も、どこかへ行ってしまった。そんな気がした。どこかスッキリした気持ちの私に、彼が慌てて声をかける。
｢な、なぜ泣くのだ!｣
いつの間にか泣いてしまっていたようだ。先程までの態度が一変し急にあたふたしだした彼に、思わず笑みが零れた。
｢もう孤独でないからですよ、バッシュくん｣