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君の瞳と夏空と(英)【学パロ】 ページ31

「いい天気だね」
そう言ったのは、空を眺める同級生。名前は知らない。友人と屋上で弁当を食べる約束していたから向かったら、彼女がいた。それだけ。
「そうだな」
綺麗な横顔だ、と思った。長い黒髪が風になびいていた。
「私ね、鷲になりたい」
「なぜ」
俺は聞いた。
「だって、空を自由に舞えるもん。あんなに広い世界を、我が物顔で飛び回って」
きっと素敵だ、と彼女が笑った。
「そうだな」
悪くないと思った。いつもなら、夢想的だとか現実的でないとかって切り捨てるはずなのに、今は否定したくなかった。
「君は?」
「そうだな……」
少し考えてから、ゆっくりと口にする。
「俺は、空になりたい」
彼女は目を丸くした。馬鹿みたいだと思った。こんなガキみたいなこと、なんで言ってしまったんだろう。恥ずかしさと後悔が混じってなんとなく居心地悪く思っていると、彼女は柔和に笑う。
「驚いた。意外にロマンチストなんだね」
「うるせっ……悪い、こんな馬鹿なこと。忘れてくれ」
俯きがちに否定した。笑われると思ったが、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「馬鹿だなんて! 君の考えは素敵だと思うよ!」
大真面目な顔で言って、それから力強く俺の手を取った。
「ねえ、空を見よう。とっておきの方法があるんだ」

 俺達は二人、屋上の床に寝転んだ。真夏の正午だというのに不思議と冷たかった。
「おお」
俺は思わず感嘆の声を漏らす。どこまでも広がる青い天井。
「こうするとさ、空が落っこちてきそうだよね」
彼女はなんだか楽しそうだった。空へ手を伸ばすその姿が何故だかとても美しく見えて、俺も真似をして手を伸ばす。今なら太陽を掴めるような気がした。
「君の目は、夏の色だね」
ふいに、彼女が言った。
「夏?」
「うん、夏。夏に生えるカタバミの色」
「雑草かよ」
不服な俺に対して、彼女はは、と明るく笑った。
「うん、雑草だよ。めちゃくちゃ強い雑草。それに」
俺は続きを待った。彼女は間をたっぷりとってから続けた。
「映した空の色と、カタバミ色が混ざりあって、すっごく素敵な夏の色だ」
それだけ言うと彼女はうーんと伸びをして、そのまま立ち上がった。
「私、もう行くね」
スカートの汚れを払って、そのままスタスタと階段へ向かってしまう。
「おい」
その背に声をかける。彼女が振り返る。視線が絡む。
「アーサー。アーサー=カークランド」
彼女はしばし瞬きをした後、ふんわり笑った。
「若草A」
その瞳には、鮮やかな夏空が広がっていた。

たんとおあがり(米)【学パロ】→←ほんとにずるい(西)【学パロ】


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作者名:ころん | 作成日時:2021年6月28日 2時

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