【APH】空模様、恋模様。【短編集】 (ページ29)

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あめふりくまさん（独）【学パロ】ページ29

私と後輩のルートヴィヒ君は、生徒会の仕事があって帰りが遅くなってしまった。学校を出る頃は小雨だったから、傘はなくとも急いで帰れば大丈夫だろうと思っていたけれど、途中から雨足が強くなってしまった。とても帰れそうにないので、私たちは近くにあった小さな雑貨屋に飛び込んだ。

｢わぁ……!｣
小さい店内に所狭しと並べられたおしゃれな雑貨。思わずテンションが上がった。ルートヴィヒ君も心なしか関心しているような顔つきになった気がする。彼はいつも仏頂面で何考えているのか分からないから、あくまで気がするだけ。お互いなにも発さず、沈黙が痛くて、私から声をかけた。
｢ねえ、タダで雨宿りさせてもらうのもなんだから、ここでお買い物していきましょうよ｣
｢そうだな｣
返事はたった一言。やっぱり寡黙だ。
｢私はあっちの方見てくるわね｣
｢了解した｣
もう少し可愛げがあってもいいのに、なんて思いながら、私は陳列棚へと向かった。

こじんまりとしているけれど品ぞろえは本当に豊富で、夢中で見て回ってしまう。
｢A｣
突然名前を呼ばれた。驚いて少し肩を揺らしてしまった。
｢な、なに?ルートヴィヒ君｣
｢その、あー、少し聞きたいことがあるんだが｣
｢なあに?どうしたの｣
彼の目線の先には、小さなくまのぬいぐるみのキーホルダー。白くて青い目の、可愛いくまさん。なんだか少し彼に似ている気がした。
｢あれが欲しいんだが、その、男が買ったり付けていたりしたら、やはり、おかしいだろうか｣
かわいい。ガタイのいい仏頂面の後輩に、こんなに可愛い一面があったなんて。私は彼の目を見てひとつ頷くと、陳列棚に向かって、くまさんを2つ手に取り、そのままレジへ向かった。

｢はい、これ｣
帰り道、2人で並んで歩きながら、彼にくまさんを手渡した。
｢ありがとう。これは代金だ｣
｢あ、いいのいいの、私が買いたくて買ったんだもの。それに、それなら誰かが何か言ってきても、A先輩が勝手に押し付けてきたから仕方なくつけてる、って言えるでしょ?｣
｢しかしだな、それでは俺の気が収まらないというか、礼はきちんとすべきだろう｣
私は少し考えて、それから口を開いた。
｢じゃあ、私とお揃いにしましょ。私もこれをつけるから、あなたもバッグにつけてね。それがお礼｣
｢なっ....?!｣
目を見開いて赤面する後輩が可愛くて、もっと彼のことを知りたいって思った。そんな雨の日のお話。