【APH】空模様、恋模様。【短編集】 (ページ11)

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私の天使様①（米）【学パロ】ページ11

「わっ……！？」
　いつものように右手でスクールバッグを持ち上げたはずが、上手く力が入らずに落としてしまう。金具がしっかり止まっていなかったらしい鞄は放課後の教室の床にたたきつけられ、中身が全てぶちまけられてしまった。やっちゃったなあと心の中で溜息をつきつつ片付けなきゃとしゃがむと、急にすっと上から手が伸びてきて教科書を拾ってくれる。思わず顔を上げると、立っていたのは隣のクラスのジョーンズ君だった。
「これ」
　彼は私の腕をぐっと握りながら、少しきつい口調で問いただす。碧眼が睨む先には私の右手首の包帯。気が付かなかったが、鞄を持ち上げる時に少し力んだからか僅かに血が滲んでいた。
「あー、ちょっと金網に引っ掛けちゃって」
　ほら私どんくさいし、と自嘲気味にへらりと笑う私に彼は呆れたような顔をする。
「えへへじゃないんだぞ！女の子の肌に傷跡が残ったらどうするんだい！？」
　彼は握っていた腕をぱっと離したかと思うと、わたわたしながら私がぶちまけた教科書を拾ってくれたり、かと思えば本当に不安そうに私の顔を覗き込む。表情がころころ変わっておもしろいなあ、なんてぼんやり思うかたわら、思わずはっと息を飲む。西日に照らされた彼の姿が天使様をかたどった彫像に見えたから。お日様の光を集めたような髪が、澄み切った夏空を閉じ込めた双眸が、壮麗で、絶美で、目が離せなかった。
　
「A」
「あ、アル君」
　あれから数ヶ月がたって文化祭を目前にしたある日、模造紙やペンが雑に詰められたダンボールを抱えて美術室を出ると、またアルフレッド君に呼び止められて足を止める。これで何回目だっただろう。もう慣れっこになりすぎて、気がつくとすっかり仲良くなってしまっていた。
「また怪我したのかい？」
　彼はドアの前で呆れたように腕を組んで私を見下ろしていたが、すぐにずんずんとこちらに歩んできて私からひょいとダンボールを取り上げてしまった。一瞬触れた手の熱がまだ残っていてどきどきする。
「よく気づくね、こんなの」
「ヒーローだからな！これくらいピースオブケイクさ！」
「そっかあ。ありがとアル君」
　はにかみながらそっと感謝の意を述べると、彼はにかっと歯を見せて笑う。ちょっといたずらっぽい表情なのに見ると何となく安心するのはなんでだろうか。