☃️ ページ26
＊*＊*
「一応はね、殴られたみたいで…あちこち痛そうだけど」
「殴られた？…2人とも何があったの」
「なぁ、さっきから何話してんの」
翔太の声がして後ろを振り向く。全然聞こえないんだけど。っていつもの笑顔で答えた。翔太の耳を見ると補聴器をしていなかった。
「翔太、補聴器は？」
「え？なに？」
「あー、えっと」
携帯を取り出してメッセージを打ち込む。『補聴器は？』とその画面を見せるとベットの脇に置いてた補聴器を俺に見せる。
「ここ」
『ここって、なんでしてないの』
「なんでっていうか、頭殴られた時にぶっ壊れた」
「付けるとハウリングすんだと」
と、照兄さんが代わりに答えてくれる。補聴器が壊れるって…。そう考えると結構やばかったんじゃないか？？
『よし、じゃ何があったか話してもらってもいい？翔太』
姉さんのメッセージに翔太は小さく頷いた。
＊
『つまり亮平の元同級生から逆恨みされて亮平は殴られ、翔太はそれを庇ってことね？』
「そういうこと。あいつマジでやばかったから警察とか言った方がいいよ」
「そっか、そっか。それは姉ちゃん達やるから安心しとけ」
姉さんの言葉をそのまま、文字にして打つ。それを翔太に見せると「よろしく」と目を細めて笑った。
「よーし安心したことだし、姉ちゃんと照はあんたらの荷物取りに帰るわ」
『荷物取りに帰るって』
メッセージをみた翔太は目を見開いて、「えっ？！」と驚いたような声を上げる。
「入院？俺、元気だけど？」
「バカ。頭打ってんだから今日は病院にいてください」
照兄に諭され、渋々返事をする。こんなに元気なら俺も大丈夫じゃないかと思うけどまー、たぶんそういう訳にもいかないんだろうね。
このまま家に返してもなって思っちゃうし。
なんとなく。だって、きっと今の翔太は。
無理してる時の翔太だから。
「じゃ、涼太！もうし少し、翔太のことよろしく」
「うん。分かった」
2人が出ていたのをみはらかって翔太が俺の名前を呼んだ。『なーに？』とメッセージを見せると背中を貸してほしいと頼まれ、俺は翔太に背を向ける。
翔太の体重が俺の背中にかかる。
「翔太…？」
「ごめん、少しだけ俺の話聞いて。ちゃんと喋れるかわかんねぇけど。お願い」
顔は見えないけど今にも泣き出しそうなその声に俺は黙って頷いた。
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