☃️ ページ25
＊*＊*
翔太side
一瞬のことで正直よく覚えねぇ。
頭の後ろに鈍い痛みが走ってそこから今まで感じたことの無い激痛に変わった。あまりの痛さに声も出せなくなる。同時に耳鳴りも酷くなって、自分が本当にここに存在してるのか怪しくなるくらいだった。
「お、まぇ…！わるっ…！いん……だ！」
何言ってんだからよくわかんねぇけどあいつがやったって事は理解出来る。すげぇ、ひでぇ顔してるし。
朦朧とする意識の中であいつが俺たちの方に向かってくるのが見えた。亮平が俺を庇おうと体に覆い被さる。
「弟に守られてたまるか、バーカ」
今のちゃんと声に出てたかな。わかんねぇや。
亮平を庇うようにして立ち、向かってくるあいつに向かって、拳を顔面に向かって突き出した。一か八か。当たった感覚はある。どうだ。
今の俺には感覚だけが頼り。ゆっくりと目を開けるとあいつは赤い顔してその場で伸びていた。
やった、やったよ涼太。
あん時のお前みたいに、俺なれたよ。
ちゃんと、ちゃんと守れた。
「にぃ、さん…！！だ、い、じょ……ぶ？！」
あー亮平、なんか喋ってんなぁ…でも、補聴器調子悪くて何も聞こえねぇや。
「悪い、ちょっと、頭グラグラするから寝るわ……」
「え？！兄さん？！兄さん大丈夫？ねぇ！」
心配すんな亮平。ちょっとだけ。ちょっと寝るだけ。
＊
涼太side
翔太と亮平が病院に運ばれた。
そのメールを見た時、俺は仕事が手につかなかった。見かねた店長が早退をさせてくれて急いで病院へと向かう。
たった数十分の距離なのにその時間が異様に長く感じた。
＊
「翔太っ！！！亮平！」
「あれ？涼太！！じゃん」
…………あれ？意外と元気？？
「おー、涼太。お疲れ」
病室には姉さんと照兄さんが先に来ていて疲れた様子で丸椅子に座っていた。
「お疲れ様。姉さん。照兄。メールもらって急いで来たんだけど…」
「元気だろ？こいつ」
と、照兄さんが小さく笑って答えた。頭を打ったって聞いてた。見た目は包帯巻かれて痛々しいけれど、思ってたよりもずっと元気そう。
「亮平は？」
「向かい側で寝てる。私たち来るまでは起きてたらしいんだけど…」
向かい側のカーテンを少しだけ開けると規則正しい寝息が聞こえてくる。
「亮平も大丈夫…なんだよね？」
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