☃️ ページ24
＊*＊*＊
兄さんが携帯を取り出し、マイク部分を補聴器に当てるようにしてかける。兄さんの手の中でぼっーと空を眺めていると、さっきまで青空だったのにいつの間にか雨雲が、空を覆っていった。
あー、もうすぐ雨かなぁ。
そんな呑気なことを考えているとドスッと鈍い音がして兄さんが俺に覆い被さった。
「にぃ…さん…？」
肩を叩くと苦しそうな唸り声が聞こえ、「にぃさん、にぃさん」と、今度は強く叩くとその手には赤い何かが付いていた。
「なに…これ、え、兄さん、翔太兄さん！！」
「お前が、お前が悪いんだ！亮平！」
罵声が聞こえ、その方向に視線を向けるとあいつが石を持っている姿が見えた。それには赤い液体。血がついている。
「お前さえ、お前さえいなきゃ、俺は！！成績も1番だったし！推薦も消えなかった！学校で浮くことも！あー！全部全部お前のせいだ！」
「ふざけんなっ、犯罪だぞ。お前が今してること」
「あ〜！！もー！！どうでもいい。2人まとめて消えろよ」
その目はもう光を失っていた。こいつはほんとに嫌いだ。自分勝手で傲慢で、自分の責任も取れない。
でもこんなやつも何処かで苦しい思いをしていた。
だからこんな風になってしまったんじゃないか。
そんなことをこんな時に考えてしまう俺は、おかしいのだろうか。
「消えろぉおおお！！！」
まるで鬼のような形相で石を持ち、俺たちへと振りかざす。俺も兄さんもとても避けられる状態じゃない。
どうする。
やだ、しにたくない。
こんな最後。
やだ。
なんで？なんでこうなる？
俺が弱いから？
こうなった？
もっと強ければ良かった？
やだ。
兄さん。
兄さんだけは、守らないと。
「弟に守られてたまるか、バーカ」
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