☃️ ページ21
＊*＊*
「だからストレス溜まりっぱなしなんだよ…。ちょっと発散させてくんね？」
ニヤニヤと気色悪い笑いを浮かべ、関節を鳴らし、こちらへと距離をつめてくる。俺は1歩後ろへと下がって彼女にそっと耳打ちをする。
「俺が3秒数えたら直ぐに逃げて」
「えっ…？それじゃ、亮平くんが、だ、だめ」
「大丈夫。俺もすぐ逃げるから。今度は悲しい思いさせないよ」
「だからお願い」と念を押すと彼女は小さく頷いた。
「3」
「なぁ、亮平。ブー子。何話してんだよ。あぁ？お前らさえいなきゃ平穏に学校生活おくれたのによ」
「2」
「なんでお前らは楽しそうなんだよ、ムカつく」
「1」
「なぁ、教えてくれよ！！！俺らの人生めちゃくちゃにして！楽しいか！あぁ？」
「0！！行って！振り返らないで！！」
俺の声と同時に彼女は走り出した。靴の音が段々と遠ざかっていくのが聞こえてくる。
「おい！まて！ブー子！！」
「行かせない！！」
彼女を追いかけようとする2人の足を掴んで足止めをした。ドンっとコンクリートに肌が当たり、膝の当たりがヒリヒリと痛み出す。
「マージで笑える！んなに彼女が大事かよ！」
「友達は大事だろ…！！お前らみたいのに苦しめられて溜まるか、俺たちは俺たちの人生を生きてる。邪魔すんな、人のせいにすんな！推薦も学校もぜんぶ全部！お前らの自業自得だ！」
感情の高ぶりに任せて言葉がどんどん出てきてしまう。自分で自分の発言にびっくりして、心臓が激しく脈打っている。
「は？なに、ムカつく。マジでムカつく！」
逆上したそいつは俺の腹にめがけて蹴りを入れた。激しい痛みと共に胃から酸っぱいものが吐き出される。
「はっ、ﾊｯー、ﾊｧｰッ」
「何が自業自得だ。お前らが、虐められるようなことしてるお前らが悪いだろ！なぁ！！俺は！俺は何も悪くねぇんだよ！！」
何度も何度も蹴られ、息が段々と出来なくなる。
やだ、まだ、しにたくない。
「ちょっと、やりすぎじゃね…？」
「もう、ぐったりしてるよ？やめろよ！このままじゃ死んじまう！」
「うるせぇ！黙ってろっ！こいつがっ！こいつが居なければ！！」
蹴られ続け、意識が途切れそうになったその時だった。あの声が聞こえてきたのは。
「お前ら、俺の弟になにしてんの？」
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