お姫様は''ますこっと''が食べたい ページ39
＊*＊*
涼太side
「ますこっとー！たべたいー！たべたいー！！」
ん〜、困ったなぁ…。
ここは都内の行きつけのスーパー。店内中に響き渡るようなその声でますこっと(シャインマスカット)を食べたいと言っているのは紛れもないうちの天使ちゃんです。
仕事が早く終わって、ぷぷを迎えに行ったついでに夕飯の買い物をしていた訳なんだけど…。お友達からシャインマスカットのことを聞いたらしく、食べたい食べたいと連呼しております。
しかし、ご存知の通り、シャインマスカットはものすごく高い。さすが高級品と言われる品物であって10人家族の家計には痛いお値段…。
「ぷぷ〜、マスカットは…誕生日とかの時にしょ？」
「………ヤダヤダ！！いま、たべたい！りょっちゃんおねがいっ！」
「うーん…でもなぁ」
「う〜！りょっちゃんいじわる！んっ！」
地団駄を踏み、泣きべそをかき始める。
あー、ダメだ。1度決めたらこの子は曲げるということを知らないからなぁ…。お菓子で吊る？それとも…帰りにぷぷの好きなスノキュアのDVDでも借りるか…？？
「あの…ちょっとすみません」
「はい…？」
やばい、うるさくしすぎてしまっただろうか…。
照兄よりもかなり体格のいい、初老の方が俺たちの前に立った。流石に圧が凄く、さっきまで泣きべそをかいていたぷぷも黙り込んでしまった。
「シャインマスカット……お好きなんですか」
「あ、えっと、お好きというか、あのこの子がお友達にシャインマスカットのこと聞いたらしくて、それで食べたいと…」
「なるほど…お嬢ちゃん、マスカット食べたいのかい」
「ぅん……ますこっとたべたい」
ぷぷが小さく頷くとその方はそうか、とぷぷの頭を大きな手で優しく撫でた。
「あの、ご迷惑で無ければ1つお願いがあるのですが…」
「あ、はい…」
＊
「うわぁっ！すっげー！！こんなに貰ったの？！」
「そうなんだよ、こんなにいいんですか？って一応聞いたんだけど貰ってくれるならって…」
どうやらあの方はシャインマスカット農家さんだったらしく、傷ついて納品できなくなってしまったマスカットをどうするか困っていた所に、俺たちを見つけたらしい。
流石に車がないと持ち帰れない量だったから我が家の運転手2人に電話して、ちょうど家に居た大兄に迎えに来てもらった。
「ますこっとー♪ますこっとー♪」
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