☃️ ページ38
＊*＊*
亮平side
「にぃさん、兄さん、もういいよ、もう、大丈夫。」
そう声をかけるけれど兄さんから反応は無かった。もしかして、補聴器電源切ってくれてた…？
そう思い、兄さんの胸を叩くと俺の目をみて、補聴器の電源を入れると少し顔をしかめて、いつもの優しい笑顔を向けてくれる。
あー、やっぱり切っててくれてたんだ…。
「落ち着いた？」
小さく頷くと「そっか」と頭を優しく撫でてくれる。ずっと溜まっていたものが吐き出されて、胸の中のモヤモヤが多少はスッキリした気がする。
「んじゃ、家帰っか！！姉ちゃん達も心配してるだろうし」
「うん。……怒るかな、姉さんも辰哉兄さんも」
「そりゃ、怒るだろなぁ。すんげー心配してたからな特に姉ちゃん」
「うん……」
「大丈夫！俺も一緒怒られてやっから！！だからな、一緒帰ろ？」
「うん。帰ろ」
少し軽くなった足取りで俺たちは家へと向かった。
＊
家に帰ると姉さんが待っていてこっぴどく叱られた。ちゃんと謝って、翔太兄さんと一緒にその理由を説明すると涙を流しながら『ありがとう、話してくれて』と、いつもの明るい笑顔を向けてくれた。
それから俺は、姉さんや辰哉兄さんたちと相談してみるフリースクールに通うことにした。一生懸命勉強して入った高校を辞めることは少し抵抗があったけれど、心が壊れてしまっては元も子もない。
あの学校にしがみつかなくなって、家族を幸せにできる仕事に着くことはできる。
あの狭い空間だけが全てじゃないんだ。
それにほら。
「あ、」
「あ…亮平くん」
もう知らなければ良かったなんて思わなくてもいい。
「あのね、亮平くん、ほんとにあの、ごめ、」
「ねぇ、あの作家さんまだ好き？」
「うん、好き…新作も買った」
「そっか！読んだら感想聞かせてよ！俺も読んでるから読み終わったら一緒に話そ？！」
「うん！…話そ！お話しよ！」
出会えた人達に感謝して、俺は今日も生きていく。
Fin.
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