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＊*＊*＊
「このハンガーゲームは、戦争という悲劇を二度と起こさないようにと考えられたゲーム。各地区の少年少女達が最後の一人になるまで戦う。
儚く、尊いゲーム。
勝者には首都スノーシティでの何不自由ない暮らしが約束されます。
さぁ、この中から勝者は出るかな？」
ついに始まってしまった。
急に怖くなり、呼吸が浅くなっていくのが分かった。照くんを探したくて視線を動かすと人混みの中で照くんがこっそりと手を振ってくれる。手を振り返すと、「大丈夫」と呟いてくれた。俺はそれに小さく頷く
「さーて、じゃぁ。レディーファーストで行こうかな」
壇上の中央にあるふたつのボール。男女で分かれたその中には番号がかかれた紙が入っている。それを引いて開いた瞬間に運命が決まる。
まずは女の子から。
「よいしょっとー！さーてと…121205番！！誰かなー！」
ざわざわと会場が騒がしくなる。その番号だと思われる子の周りが開き、当たってしまった子の顔が見えてきた。
「嘘……でしょ……？」
「阿部ちゃん…？」
真っ青な顔をした阿部ちゃんがその子の元へと走っていく。途中、警備隊に止められながら『A！』って名前を呼ぶ。
綺麗な黒髪で1本おさげのAと呼ばれるその子は、俺にも見覚えがあった。
舘さんの妹だ……。話したことはあまりないけれどとっても穏やかで地区のみんなからも慕われていた。
「Aっ！まって、ダメだっ、俺がっ俺が！」
「深澤さん！」
「ん？なーに？」
「121205番。宮舘Aと申します。この度は選んで頂き、ありがとうございます。ハンガーゲームに参加出来ること心より嬉しく思います。」
ワンピースの端と端を手でつまみ、優雅な鳥のように小さくお辞儀をした。その姿は堂々たるもので壇上に上がっていく姿もとても綺麗だった。
去り際に阿部ちゃんと視線を合わせ、微笑みかけたのは何かきっと2人にしか分からないことがあったんだろうな。阿部ちゃんは悔しそうに唇を噛んで、枠の中へと戻ってくる。
「阿部ちゃん？大丈夫…？」
「うん。ごめんね…大丈夫」
「あの人って…？舘さんの妹さん？」
「……うん。そう。恋人…なんだ」
恋人…。そっか。そうだったんだ。
恋人ならこんなゲームに参加させたくないよね。俺だって照くんが参加するなんて絶対に嫌だ。たった2人の兄弟。それを失うことを考えると胸が苦しくなる。
でも、俺自身も怖くてたまらない。
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