47話 ページ8
肩が触れる距離。
普段と違う匂い。
それでも、微かに香る甘いニトロ。
『…もしかして、聞いてた？』
「…わざとじゃねぇ」
『聞いてたんだ』
隠そうと思って隠していたわけではない。
聞かれなかったから答えてこなかっただけ。
『ヒーローになるつもりはないけど、最近はヒーローってカッコイイなって思うの』
勝己は何も言わずに私の目を見た。
『みんなといるとね、私も強かったらヒーロー目指してたのかなとかたまに思うんだよね』
勝己は私と目が合うとなんとも複雑な顔をした。
「…お前は大人しく守られてろよ」
『それくらい弱いってこと…？』
「…ちげーよ」
『んー…でも実際運動できないし、戦闘向き個性だったとしても足でまといになりそうだなぁ』
勝己は一瞬不機嫌そうな顔をした。
「俺はNO.1になる男だから、お前は大人しく俺のとこにいたらいい」
『ふふ、頼もしいね？』
「ったりめーだ」
勝己は満足そうに鼻を鳴らした。
いつもより落ち着いた声のトーン。
普段つり上がった目も、なんとなく優しく見えて、このまま時が止まればいいのになんて考えてしまう。
優しく話す勝己の声で私は少しずつ、眠気に誘われていく。
バレないようにと、小さくあくびをすれば、すぐに気づいた勝己が優しい声色で私に声をかけてくれる。
「眠ぃんか」
『少しね』
そう答えると、勝己は私の頭を抱えて勝己の肩にもたれさせるように引き寄せた。
頭に乗ったままの手から伝わる体温に、心臓はうるさく跳ねた。
何も言わずに、掻くように頭を撫でてくれる勝己。
電気に見られたら…なんて思いながらも私は夢の中へ落ちた。
気づいた時には女子部屋にいて、三奈ちゃん達が三角関係だ♡と喜んで、とても気まずくなった。
「上鳴がすっごい不貞腐れてたよ〜」
『そうだよね…後で謝らなきゃ…』
「モテる女は辛いね〜！」
『モテてないし、三奈ちゃん楽しんでるでしょ』
「そぉんなことないって！私はAちゃんの味方だってー！」
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作者名：すもももも | 作成日時：2022年9月5日 15時
