46話 💥side ページ6
「は〜合宿中もAちゃんが居てくれるなんて幸せすぎる〜」
いつも以上にアホな顔をしたアホ面。
壁の先は女湯らしく楽しそうな会話が聞こえてくる。
「癒月は上鳴のどこが好きで付き合ったの？」
『優しいとこかな』
ああ。そうだった。
アイツはアホ面の彼女だった。
会話を盗み聞くように、男湯は静かになる。
「この会話隣に聞こえてんのかな！」
その声に、アホ面は頬を染めて嬉しそうに笑った。
ムシャクシャする。
「あれ、爆豪！もう出んの？」
「ああ、アチィ」
しょうゆ顔に声をかけて風呂場を後にした。
冷たい炭酸水を飲み干して、風呂場前の休憩室に入ろうと扉に手をかける。
『そうだったね』
Aとあのマセガキの声が聞こえてくる。
Aの両親がヒーローだったこと。
母親が亡くなり、父親は再婚したこと。
再婚相手から解放される為に雄英に入ったこと。
「…チッ」
内緒ねと指切りをする声が聞こえてくる。
俺は声をかけることもせずに部屋に戻った。
少しすると、アホ面達が女子も連れて部屋に来た。
もちろん、Aも一緒に。
「大部屋いいなぁー！」
「めっちゃひろーい！」
黒目達が騒ぐ中、Aはアホ面と楽しそうに笑っていた。
あぁ…イライラする。
「枕投げしようよ！」
黒目のその一言で始まった枕投げ。
参加する気にもなれず、俺は壁を背にあぐらをかいた。
『勝己はしないの？』
そっと抜けてきたAが、俺の隣に座った。
いつもと違うシャンプーの匂い。
それでも、バニラのような甘い匂いは微かにあって、俺の胸はギュッと苦しくなった。
「お前こそいいのかよ」
『運動嫌いだし…大人数って慣れなくて…』
気まずそうに笑うAの髪を掬って耳にかける。
途端に真赤になるAが可愛くて、抱きしめたくなるのをぐっと堪えた。
「明日の夜、あけとけ」
『ん、わかった』
Aは頬を染めたまま、俺から目を逸らして枕投げをしてるアイツらを眺めた。
『ヒーロー科って、強くて、みんな仲良くて羨ましい』
「…でもヒーローになる気はねぇんだろ」
『あれ、なんで知ってるの？』
「…見てりゃ分かる」
『エスパー？』
「ウルセェ」
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作者名：すもももも | 作成日時：2022年9月5日 15時
