【ヒロアカ】貴方の腕の中で。【爆豪勝己】 (ページ18)

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55話ページ18

待っている間、怖くて震える私の背中を緑谷くんはずっと撫でてくれた。

『…なんか変な臭いしない？』

なんだか焦げ臭いような臭いがする。

「あれは…黒煙…」

緑谷くんが見上げた先にはもくもくと黒煙が立ち上っていた。

『山火事…？個性…？』

瞬間、ピクシーボブが宙を浮いた。

「飼い猫ちゃんは邪魔ねぇ〜」

武器でピクシーボブの頭を押さえつけたヴィランが立っていた。

どうしようどうしようどうしよう。
私は戦えない。
逃げ切れるほど足も早くない。

「交戦はせずに逃げて」

マンダレイに言われ、飯田くん達の後を追う。
緑谷くんは、洸汰くんの元へ行くと走っていってしまった。

なんとか施設までたどり着いた。
息も切れ切れで、もう走ることはおろか、立っているのもきつい。

相澤先生は私たちとすれ違いで走っていってしまった。
施設に入ると不安そうな顔をした電気達がいた。

『でん…』

「Aちゃん…！！！」

電気達の顔を見た途端一気に足の力が抜けた。
倒れかける私を、電気が受け止めてくれた。

「A！」

『は、んた…』

「怪我はねぇか！？」

『え、えいじろ…』

受け止めてもらっても立っていられず座り込んだ私を、電気は思い切り抱きしめた。

「無事でよかった…」

『うぇっ…怖かったぁあ…』

泣き出す私の涙を、電気は私の頬を手で包んで拭った。

なんとか椅子に座り、膝を抱え込む。
初めて目の当たりにしたヴィラン。

テレビや人から聞く話なんかよりずっと怖かった。
容赦なく突きつけられた刃と悪意。

こんなものに立ち向かおうとしてるのか。

そう思うと、改めてヒーローにはなれないと思った。

暫くして、マンダレイのテレパスにより、戦闘許可と勝己が狙われていることが伝えられた。

『か…つき…』

「先生！ダチが狙われてんだ！行かせてください！！」

鋭児郎や飯田くんがブラドキングに頼み込んでいる。
私は隣に立っている範太の服の裾を掴んだ。

「A」

範太は私の手をぎゅっと握って頭を撫でた。

「俺らいるから大丈夫」

電気も私の手を握って背中を撫でてくれた。