私がサッカーを嫌いな理由

46話 ページ48

凛くんを探し回った結果……フィジカルスタジオにいた…
けれど、精神統一をしており…話しかけられる雰囲気では無い。


｢……明日にしよう｣


諦めて、フィジカルスタジオを後にしようとした時…｢おい｣と声を掛けられた…


再び中を覗くと、立ち上がってこちらに向かって来た…



凛｢…なんだよ｣


｢その……お礼言おうと思って｣


凛｢…そんな事かよ｣



｢そんな事って……

てか…顔、大丈夫?｣


凛｢あぁ…大した事ねぇ…



お前こそ……大丈夫なのかよ｣



そっぽを向いた彼の言葉に、驚いた…あの、糸師 凛が｢大丈夫｣って…めちゃくちゃレアだ。


｢あ、うん…大丈夫｣



凛｢そうか…｣



｢…部屋まで運んでくれてありがとう…｣



凛｢……別に…感謝される筋合いねぇよ｣



ほんとに、こういう所兄とそっくりだな…とつくづく思う。


｢…っあのさ…話変わるだけど…

毎日、精神統一とかしてんの?｣



凛｢当たり前だ……俺は、世界一になって…

あのクソ兄貴を潰す…｣



兄の事になった途端…顔つきが変わった。

その顔からは溢れんばかりの憎悪を感じ…ゾッとした…



｢……仲悪いの?お兄さんと｣



凛｢…あ?お前に関係ねぇだろ｣



｢まぁ、そうだけど…｣



糸師 凛にとって、糸師冴は地雷だと確信した…絶対、踏んだらヤバいやつだ…



凛｢……俺には休む暇は無い｣



｢気持ちは分かるけど…｣



凛｢お前なんかに分かるわけねぇだろ｣



｢分かるわよ!

そういう恨みの気持ちは特にね…｣



いつもより、強い口調の私に…凛くんは黙ってしまった…
対象は違えど…強い恨みを持った事はある…今もそう



｢…だから…無理しないで欲しい｣




凛｢…っ!?｣



私の言葉は、凛くんにとって予想外だったみたいで…
その証拠に、大きく目を見開いていた。


まぁ、私もこんなことは言うつもりは無かったけど……


糸師冴を恨む凛くんを見て……過去の自分と重ねてしまったのだろう。




凛｢……お前に言われたくねぇよ…｣



優しい声と共に伸びた指先は…絆創膏を撫で上げた…
思わず、彼の方を見ると…若干口元が緩んでいた。


｢…っ｣



凛｢…なんだよ｣



｢いや｣



初めて見る顔…あんな顔もできるんだ…

そんな下らない事を考えながら、じっと彼を見つめる…



それが気に食わなかったのか、またいつもの仏頂面に戻った…


｢じゃあ、私は行くね…邪魔してごめん｣



凛｢…おう｣


挨拶を交わして、食堂に向かった。

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