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フライトで疲れているだろうと、空港から真っ直ぐ向かったのは潔の自宅。
ケータリングの料理にワインを開け、久しぶりに対面での会話を楽しんでいれば、夜などあっという間に更けていく。
先にバスルームを使わせた彼女と入れ違いにそこへ向かった潔は改めて、自身の悩みを思い出した。
(いや、俺もう幾つだって話……)
自嘲が混じるのは仕方ない。
恋愛経験の浅い頃ならともかく、既に20代も後半。まさか今更、こんなことで悩むとは。
(……さすがに今夜は、な)
そう。潔と彼女は未だ。
いわゆる、" そういうコト " を致していない。
理由は単純だ。
まずはそもそも、直接会える機会が多くないこと。更に言えば、本来の問題はそこではない………と、潔は考えている。
なら、何か。
それは________________
『……っ、あああああ! お風呂上がりの世一さんとか! 色気ヤバ! え、ヤバ!?』
「え……あ、そ、そう……?」
シャワーを済ませリビングへ戻った潔に向けられる、熱い視線と黄色い歓声 (?) 、である。
それはもう、「雰囲気ってワードご存知?」とでも聞きたくなるレベルの。
ソファで身悶えしている彼女の方こそ、風呂上がり特有の色香をまとっているというのに。
(自覚、してねぇんだろうなあ)
その見た目でよくぞ、その歳まで純情を守ってこれたものだと。何なら潔は、これまで彼女の前に撃沈してきたであろう男共へ、同情すらしていたが。
さすがに限界である。
「………A、」
欲の滲んだ声で呼んでやれば、その細い肩は小さく跳ねた。朱に染めた頬、何か言いたげな瞳を向けられ、潔は迷わず唇を寄せる。
啄むように数回、触れるだけの口づけを落として。
その境目を舌でなぞると、応えるように彼女のそれは薄く開かれた。
しばらくの間、感触を楽しんでいれば。
『ん、……はっ………世一、さんっ……』
「……ん?」
上がる呼吸の合間に名を呼ばれ、潔は一旦、その唇を解放してやる。
『あの、えっと』などと言い淀む彼女を、根気よく待っていれば。
『……もう今日は私、喋らないようにしますから………だから、その、』
………彼女の意図がすぐに読めた潔はやはり、小さく笑ってしまったが。
「ふは、そっか………でもさ、」
「イイ声は聞かせろよ?」と続けて囁けば、最愛の彼女の柔らかな頬は、ボンと。
音を立てる勢いで、その朱を濃くした。
終
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ひよ(プロフ) - 魔孤蠧マコトさん» 魔孤蠧マコト様、はじめまして!勢いのあるコメントありがとうございます♥ 大人になった潔のエゴみとか格好良さが、少しでも感じて頂けていたら嬉しいです! (4月14日 13時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
魔孤蠧マコト(プロフ) - ヴワ゛ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!潔のくせに!!潔くせにィィィィィ!!!!!可愛いくせにィィィィィ!!かっこよくなってんじゃねぇヨォォォォ!!ヴワ゛ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!最後で尊†┏┛ʚ♡ɞ┗┓†死したわ!!何だこの神作品は!!コロす気か!? (4月13日 18時) (レス) @page50 id: 96bbb29a63 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - ちゃむさん» ちゃむ様、はじめまして! 完結済の話にコメント頂けて喜び舞ってます♥ 色々ストレートな夢主ですが、気に入って頂けたみたいで良かった…!ちゃむ様最推しを変更できて光栄です!(ニヤ )(悪いお顔) (3月21日 8時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃむ - あ”あ”あ”あ”ぁ!!!お、終わってしまった…この作品の夢主好きだったのになぁ…てかひよさん!!どうしてくれるんですか!!?私の最推しがよっちゃんになっちゃったじゃないですか!(すんません) (3月20日 20時) (レス) @page47 id: b02cacdca3 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - しおさん» しお様、はじめまして!コメントありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです♥ ご指摘の通りスラ/ダンの曲でした!笑 気づいて頂けた! 夢主も気に入って頂けたようで良かったです(泣) (3月11日 12時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
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