39 : 時透無一郎、拝。 ページ40
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__________ 拝啓、鉄井戸A様。
『………何か調子狂うな』
最後の宛名くらいまっとうに書こうかなって、気が向いただけだよ。
『ほんと怖い、その読心術』
これ、遺書だからさ。本当はもっと真面目に、堅い文章で書くべきなのかもしれないんだけど。
Aには何か普通に、いつもの手紙みたいに書きたいと思うから。そうするね。
『あ、ハイ。どうぞ』
まず、Aがこれを読んでるってことは、僕はもう死んでる訳だよね。
『身も蓋も無さすぎて、何て突っ込めばいいのか最早わからない』
僕は鬼を滅するためなら、自分がもし命を落としたとしても構わないと思ってる。別にこれは強がりでも何でもなくて、心からの本音。鬼殺隊・霞柱としての。
『………うん。わかってるよ』
でもね、A。
時透無一郎っていう一人の人間としての話だと、それは少し変わってくるみたいだ。
『………』
鬼なんか居ない世で、Aや小鉄くんに出逢いたかったとも思う。そこで友達になって遊んだり出来たら、きっと楽しいでしょ。
『そうだね……………絶対楽しい』
今も僕は、自分を幸せだと思ってる。でも鬼さえ居なければ、また違う幸せもあるのかもしれないと思うよ。だからこそ、必ず鬼を滅したいとも。
『…………そっか、うん』
もしいつか、そんな世が来たらさ。僕はAを、もっと知りたいって思ってる。
『うん。私も』
僕、頑張るから。この先のA達が、平和な夜を過ごせるように。僕の大切に想う人達が皆、もっともっと幸せに暮らせるように。
『………』
それにこれだけ頑張ったならさ、神様だって、僕の言うことは聞いてくれると思うし。
『………はは、聞かせる気満々じゃん……』
その時は、「鬼の居ない世で、もう一度Aに会わせて」ってお願いしとくね。
『っ、………ん………うんっ……』
だからどうかその時まで、誰よりも幸せな人生を。僕はいつも、それを願ってる。
『…………ひっ…………う、んっ……!』
じゃあまたね、馬鹿A。
___________時透無一郎 拝
『っ、うぁっ………無、一郎、くん……!』
またね。絶対だよ。今度こそ約束守ってよね。
ようやく込み上げた嗚咽はそのままに、私は何度も何度も、同じ言葉を一人。
ただただ、繰り返していた。
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ひよ(プロフ) - メメさん» メメ様、はじめまして!完結からだいぶ経っている作品にコメント頂き、本当にありがとうございます😭 嬉しかったです!現世編の方ではもっと青春してますので、宜しければそちらも是非♥ (4月27日 13時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
メメ - 良すぎます!なんかもう、わー青春だねーって感じします。最後の方。 (4月26日 13時) (レス) @page48 id: 7b4a5b0ad7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 優衣さん» 優衣さま、はじめまして!コメントありがとうございます、すっごく嬉しかったです♥️ 原作軸は原作の結末通りに書きたい派なので、、現代転生後のハピエンとしました…! (7月30日 21時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
優衣 - 無一郎が夢主ちゃんのお面を「オカメ」と言っていたのが面白かったです❗夢主ちゃんと無一郎が現代で幸せになれる事を願います❗ (7月30日 16時) (レス) @page50 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - さざんかさん» さざんか様、はじめまして!コメありがとうございました! 読んで頂いた上、、嬉し過ぎるお言葉を頂き、こちらこそ感謝感激です(泣) 鬼殺隊の面々には、現世では何でもない幸せを堪能して欲しい…!という願望のラストでした。気に入って頂けて良かったです(泣) (6月6日 12時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
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