刀鍛冶の娘【鬼滅の刃】【時透無一郎】

32 : 最終決戦 2 ページ33

side 時透無一郎





柱の中でも上位である、悲鳴嶼さんと不死川さんの実力をもってしても、その攻撃は届かない。


今の自分が合流したところで、戦力が大きく上がるはずもないが。



(………それでも、)



ほんの一瞬でいい、上弦の壱の動きを止められたら。もし自分に、それが出来れば。



(二人のどちらかが、奴の頚を斬ってくれる)



その確信だけで、奴の間合いの内側に入ろうと構えた時___________


悲鳴嶼さんが、不死川さんの名を叫ぶ。



(俺の意図を汲んで合わせてくれた……！！)



二人も続いて走り出した。
この機会を逃すわけにはいかない。



(………っ、入れ入れ入れ入れ！！)



複雑に折り重なった攻撃の隙間、その間合いの内側に___________



(抜けた！！)



迷いなく飛び込み、勢いのまま奴の脇腹へと刀を突いた。


同時に左脚へは、焼けるような痛みと。
汚ない音を立て、口から溢れる鮮血。


また斬られたのだと、気づいたところで。



(放すな放すな！！ バラバラにされても！！)



全ての意識を右手に集中させ、強く強く、自分に馴染んだ刀を握り締める。


そうして、祈るように。



(玄弥、今だ！ 早く撃て！！)



こちらの機会を隠れて伺っているであろう仲間へ、胸の内で叫んだ。



__________もし俺が、上弦の壱の動きを止められたら。



(早く……！ 俺もろとも撃て！ 躊躇するな！！)



誓い合った約束。
鬼をこの世から滅するために。



ドン、と重い音が響き、玄弥が銃を放ったことを理解する。


その弾は上弦の壱の身体に入り込み、一気に根を生やした枝となって、それを固定した。


そこへすかさず斬りかかる、悲鳴嶼さんと不死川さん。勝てると思った瞬間。



空気までもを揺らす咆哮(ほうこう)が合図かのように。

幾本もの刃と斬撃が、その身体から___________



(まずい、死ぬ)



霞む視界、再び悲鳴嶼さんと不死川さんが飛び込んでくるのが見えた。


死ぬまで戦うつもりなのはわかっている。
だけどこの二人まで死なせちゃいけない。



(……まだ無惨が残ってるんだ……みんなの為にも、この二人を守らなければ)



死ぬ前に何とかしなければと、その思いだけで。

ただただ刀を_________鉄井戸さんと鉄穴森さんが打ってくれたそれを強く握る。










___________最期に見たのは。



玄弥の血鬼術で再び固定された、上弦の壱の頚が。
悲鳴嶼さんと不死川さんの、赤く染まった刀で。



落とされた絵、だった。


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