26 : いつかは、僕の ページ27
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無一郎くんも交え三人で修理に励んでいれば、あっと言う間に日は暮れてしまう。
まだ
でも「あと一日、猶予はあるよね」なんて、無一郎くんは最後まで付き合ってくれるつもりらしく。
そこで療養所の先生と奥様のご厚意で、無一郎くんも今夜はここに泊まることになった訳だが。
「何で風呂上がりまで、おかめなのさ」
『習慣? としか言いようが』
今はもういいでしょと、無一郎くんは私のお面を素早く外してくる。
頬には少し、冷たい夜風。
「ちょっと旅に出てる気分なんだ」
『ここは温泉も引かれてるしね』
温泉場のすぐ側にあるこの療養所のお風呂は、その湯が引かれている。
まだ完全に傷が癒えていない無一郎くんにも、ちょうど良い湯治かもしれない。
あ、私もですけど。
温泉に浸かり、またも美味しい食事を頂き。
普段の生活を考えれば、確かに旅気分にもなるんだろう。
浴衣を着て縁側で脚をプラプラさせる姿は、毎夜毎夜、鬼を狩り続ける柱にはとても見えないが。
「Aの家族は?」
『祖父が亡くなってからは、母と私だけ。父は祖父より前にもう、病気で』
「そっか」
今日一日、ほぼ無一郎くんと一緒に過ごす中で。
彼の家族のことは既に聞いていた。
双子のお兄さんのことも。
「Aは、刀鍛冶を目指してるんだよね」
その話も少しした。
女の力でそれを目指すのは、ひどく難しいと。
『おじいちゃんが刀を打つの、すごく格好良いと思ってたんだ』
「うん」
『それに自分が打った刀で、鬼が一体でも減ってくれるなら………やっぱり嬉しいし』
「日輪刀が無いと、鬼は斬れないしね」
今なら炭治郎の言ってたことも、よくわかると。
無一郎くんはしみじみとした風に呟く。
あの時とは別人のように。
『でも鬼狩り様が居ないと、日輪刀もただの刀だよ』
「うん。だから僕らは、一緒に鬼を斬ってるってことだ」
そうだね、と頷けば、無一郎くんは少し嬉しそうな色で微笑んだ。
それから、こちらを伺うように。
「早く一人前になって、僕の刀を打ってね」
『ええ………霞柱さまの?』
「鉄井戸さんの孫娘でしょ。頑張って」
そしたらAとも鬼狩りが出来る、と。
星が降ってきそうに澄んだ、夜空を仰ぎ。
無一郎くんはその先の世へ、思いを馳せるかのように___________
その大きな瞳を優しく、細めたのだった。
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ひよ(プロフ) - メメさん» メメ様、はじめまして!完結からだいぶ経っている作品にコメント頂き、本当にありがとうございます😭 嬉しかったです!現世編の方ではもっと青春してますので、宜しければそちらも是非♥ (4月27日 13時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
メメ - 良すぎます!なんかもう、わー青春だねーって感じします。最後の方。 (4月26日 13時) (レス) @page48 id: 7b4a5b0ad7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 優衣さん» 優衣さま、はじめまして!コメントありがとうございます、すっごく嬉しかったです♥️ 原作軸は原作の結末通りに書きたい派なので、、現代転生後のハピエンとしました…! (7月30日 21時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
優衣 - 無一郎が夢主ちゃんのお面を「オカメ」と言っていたのが面白かったです❗夢主ちゃんと無一郎が現代で幸せになれる事を願います❗ (7月30日 16時) (レス) @page50 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - さざんかさん» さざんか様、はじめまして!コメありがとうございました! 読んで頂いた上、、嬉し過ぎるお言葉を頂き、こちらこそ感謝感激です(泣) 鬼殺隊の面々には、現世では何でもない幸せを堪能して欲しい…!という願望のラストでした。気に入って頂けて良かったです(泣) (6月6日 12時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
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