22 : 僕の話を ページ23
・
「おそよう」なんて起こされ方をしたものの、現在時刻は午前5時を回ったところだ。早朝だ。
もう少し寝てても許されると思う。
一応まだ怪我人扱いされてるし、私。
………っていうかこんな朝早く、よく療養所の中まで入って来れたな。この人。
「途中で鉄穴森さんに会って、案内してもらったから」
『柱って読心術スキルも必要なんですか？』
怖い怖い。
声に出してすらない思考に対して、普通に返事してこないでくれ頼むから。
「そんなこと無いけど………Aがわかりやすいだけじゃないの？」
『喧嘩売ってるなら買わなくもないですけど………物理なら、手加減して下さいね』
『せっかく助けて頂いた命なので』と続ければ、霞柱は大きな瞳を更に丸くして___________
「………ふ、あははっ……！」
『え』
笑ってる……？
え？ 「無一郎の " 無 " は、無表情の " 無 "」とかじゃなかったでしたっけ？？
「失礼だよ。僕だって笑うことくらいあるし」
『読心術怖すぎて』
「ふふ、ほんとAって面白い」
さっきからずっと。
感じている違和感の、正体。
『………覚えられたんですか、私の名前』
確かあの日はただ、「君」と。
だから興味すらないだろうと思ってたのに。
私の質問には口角のみを上げ、霞柱は立ち止まる。
数歩先には墓石。
少しだけ眉を寄せてそれを見つめた後、花を手向け、手を合わせ。
しばらくそのまま。
「………鉄井戸A、でしょ」
『………おかめは被ってるお面であって、素顔でも名字でもないんですけど』
『印象が強すぎてさ、つい』
ふふ、とまた、霞柱は小さく笑う。
私とそう歳も変わらないと、おじいちゃんが言っていたけど。
確かに笑顔だけなら、相応の幼さが見えた。
「前の………僕の話、聞いてくれる？」
その意図は、よくわからなかった。
ただ先日とは全く雰囲気の違う表情に、ほぼ反射的に頷く。
鬼狩りを志す人の多くが、肉親を鬼に殺されているとはよく聞く話。
霞柱も例外ではなかったらしい。
しかもその上________
「………僕も、ほとんど死にかけてた。そこを産屋敷家に助けられて…………次に目覚めた時にはもう、それまでの記憶が全部消えてた」
『記憶、喪失……？』
うん、と肯定してから、霞柱は再び口を開く。
「それだけじゃなかったんだ。その後の、新しい記憶を留めることすら僕は」
___________出来なくなった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 969人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひよ(プロフ) - メメさん» メメ様、はじめまして！完結からだいぶ経っている作品にコメント頂き、本当にありがとうございます😭 嬉しかったです！現世編の方ではもっと青春してますので、宜しければそちらも是非♥ (4月27日 13時) (
レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
メメ - 良すぎます！なんかもう、わー青春だねーって感じします。最後の方。 (4月26日 13時) (レス) @page48 id: 7b4a5b0ad7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 優衣さん» 優衣さま、はじめまして！コメントありがとうございます、すっごく嬉しかったです♥️ 原作軸は原作の結末通りに書きたい派なので、、現代転生後のハピエンとしました…！ (7月30日 21時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
優衣 - 無一郎が夢主ちゃんのお面を「オカメ｣と言っていたのが面白かったです❗夢主ちゃんと無一郎が現代で幸せになれる事を願います❗ (7月30日 16時) (レス) @page50 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - さざんかさん» さざんか様、はじめまして！コメありがとうございました！ 読んで頂いた上、、嬉し過ぎるお言葉を頂き、こちらこそ感謝感激です(泣) 鬼殺隊の面々には、現世では何でもない幸せを堪能して欲しい…！という願望のラストでした。気に入って頂けて良かったです(泣) (6月6日 12時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
