14 : 上弦、襲来。4 ページ15
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「………鬼狩りの最大の武器である呼吸を止めた。もがき苦しんで歪む顔を想像すると堪らない…………ヒョヒョッ!」
「っ、時透さんが……!」
水が満ちるその鉢の中で、霞柱は刀を突く動作をしているが。
まるで膜のようにそれはぐにゃりと歪むだけで、弾けはしない。
隣の小鉄くんはガタガタと震えている。
「………いけない、あちらにはまだ鋼鐵塚さんが!」
霞柱を閉じ込めた壺の鬼は満足げに笑ってから、すぐ隣の小屋へと視線を向けた。
鉄穴森さんが慌てたように発した名に、状況が掴めない私へ小鉄くんが。
「鋼鐵塚さん今、戦国時代の錆びた刀を、ものすごく大変な手法で研磨してるんだ」
あの
「鋼鐵塚家に代々伝わる研磨術で、三日三晩、手を止めてはならないとか」
『三日三晩!?』
そんな過酷な研磨術など、聞いたこともない。
鉄穴森さんは、意を決したように立ち上がり。
「お二人はとりあえず、ここに隠れていて下さい。私は鋼鐵塚さんを見てきます」
『でもそれじゃ鉄穴森さんも、』
「A少女、小鉄少年を頼みますよ。鬼の隙を見て、どうか逃げて」
わかりましたか、と肩を強く掴まれれば、頷くしかないだろう。
私は無力だ。
剣士でも無ければ、一人前の刀鍛冶ですら遠い。
素早く小屋の方へと駆けていった鉄穴森さんを見送り、もう一度隠れなければと。
_________思ったのだ、もちろん。
鉄穴森さんが言うことは正しいから。
でも。
水の壺を振り返れば、ちょうど霞柱がその内側から再び、刀を突いたところで。
やはり破れはしない。
そして霞柱の身体からは、力が抜けたようにも見えた。
いくら柱でも、信じられない程に強くても。
生身の人間は、息が出来なければ死ぬ。
「Aさん、俺」
私と同じ場所を見つめる小鉄くん。
立ち上がって、懐から包丁を取り出して。
「時透さんを助けたい」
私が、失敗した。
だから霞柱は閉じ込められた。
小鉄くんを止め、諭し、逃げるべきだ。
頭ではわかっている。
わかっている、けれど。
『私が行く。小鉄くんはここで待ってて。まずいと思ったら、構わず逃げて』
「えっ!? あ、待って! Aさん!!」
驚いた小鉄くんの手から、その包丁を奪うようにして。
私は水の鉢へと駆け出した。
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ひよ(プロフ) - メメさん» メメ様、はじめまして!完結からだいぶ経っている作品にコメント頂き、本当にありがとうございます😭 嬉しかったです!現世編の方ではもっと青春してますので、宜しければそちらも是非♥ (4月27日 13時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
メメ - 良すぎます!なんかもう、わー青春だねーって感じします。最後の方。 (4月26日 13時) (レス) @page48 id: 7b4a5b0ad7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 優衣さん» 優衣さま、はじめまして!コメントありがとうございます、すっごく嬉しかったです♥️ 原作軸は原作の結末通りに書きたい派なので、、現代転生後のハピエンとしました…! (7月30日 21時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
優衣 - 無一郎が夢主ちゃんのお面を「オカメ」と言っていたのが面白かったです❗夢主ちゃんと無一郎が現代で幸せになれる事を願います❗ (7月30日 16時) (レス) @page50 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - さざんかさん» さざんか様、はじめまして!コメありがとうございました! 読んで頂いた上、、嬉し過ぎるお言葉を頂き、こちらこそ感謝感激です(泣) 鬼殺隊の面々には、現世では何でもない幸せを堪能して欲しい…!という願望のラストでした。気に入って頂けて良かったです(泣) (6月6日 12時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
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