検索窓
今日:842 hit、昨日:1,603 hit、合計:454,039 hit

14 : 上弦、襲来。4 ページ15







「………鬼狩りの最大の武器である呼吸を止めた。もがき苦しんで歪む顔を想像すると堪らない…………ヒョヒョッ!」


「っ、時透さんが……!」



水が満ちるその鉢の中で、霞柱は刀を突く動作をしているが。


まるで膜のようにそれはぐにゃりと歪むだけで、弾けはしない。

隣の小鉄くんはガタガタと震えている。



「………いけない、あちらにはまだ鋼鐵塚さんが!」



霞柱を閉じ込めた壺の鬼は満足げに笑ってから、すぐ隣の小屋へと視線を向けた。


鉄穴森さんが慌てたように発した名に、状況が掴めない私へ小鉄くんが。



「鋼鐵塚さん今、戦国時代の錆びた刀を、ものすごく大変な手法で研磨してるんだ」



あの絡繰(からくり)人形の胴体から出てきた刀なんだよ、と補足され、ようやく理解する。



「鋼鐵塚家に代々伝わる研磨術で、三日三晩、手を止めてはならないとか」


『三日三晩!?』



そんな過酷な研磨術など、聞いたこともない。
鉄穴森さんは、意を決したように立ち上がり。



「お二人はとりあえず、ここに隠れていて下さい。私は鋼鐵塚さんを見てきます」


『でもそれじゃ鉄穴森さんも、』


「A少女、小鉄少年を頼みますよ。鬼の隙を見て、どうか逃げて」



わかりましたか、と肩を強く掴まれれば、頷くしかないだろう。



私は無力だ。
剣士でも無ければ、一人前の刀鍛冶ですら遠い。



素早く小屋の方へと駆けていった鉄穴森さんを見送り、もう一度隠れなければと。



_________思ったのだ、もちろん。
鉄穴森さんが言うことは正しいから。



でも。



水の壺を振り返れば、ちょうど霞柱がその内側から再び、刀を突いたところで。


やはり破れはしない。
そして霞柱の身体からは、力が抜けたようにも見えた。



いくら柱でも、信じられない程に強くても。
生身の人間は、息が出来なければ死ぬ。



「Aさん、俺」



私と同じ場所を見つめる小鉄くん。
立ち上がって、懐から包丁を取り出して。



「時透さんを助けたい」



私が、失敗した。
だから霞柱は閉じ込められた。


小鉄くんを止め、諭し、逃げるべきだ。
頭ではわかっている。



わかっている、けれど。



『私が行く。小鉄くんはここで待ってて。まずいと思ったら、構わず逃げて』


「えっ!? あ、待って! Aさん!!」



驚いた小鉄くんの手から、その包丁を奪うようにして。


私は水の鉢へと駆け出した。


15 : 上弦、襲来。5→←13 : 上弦、襲来。3



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (694 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
969人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 時透無一郎 , 霞柱   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ひよ(プロフ) - メメさん» メメ様、はじめまして!完結からだいぶ経っている作品にコメント頂き、本当にありがとうございます😭 嬉しかったです!現世編の方ではもっと青春してますので、宜しければそちらも是非♥ (4月27日 13時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
メメ - 良すぎます!なんかもう、わー青春だねーって感じします。最後の方。 (4月26日 13時) (レス) @page48 id: 7b4a5b0ad7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 優衣さん» 優衣さま、はじめまして!コメントありがとうございます、すっごく嬉しかったです♥️ 原作軸は原作の結末通りに書きたい派なので、、現代転生後のハピエンとしました…! (7月30日 21時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
優衣 - 無一郎が夢主ちゃんのお面を「オカメ」と言っていたのが面白かったです❗夢主ちゃんと無一郎が現代で幸せになれる事を願います❗ (7月30日 16時) (レス) @page50 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - さざんかさん» さざんか様、はじめまして!コメありがとうございました! 読んで頂いた上、、嬉し過ぎるお言葉を頂き、こちらこそ感謝感激です(泣) 鬼殺隊の面々には、現世では何でもない幸せを堪能して欲しい…!という願望のラストでした。気に入って頂けて良かったです(泣) (6月6日 12時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ひよ | 作者ホームページ:ありません  
作成日時:2023年4月13日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。