番外編 5 : 夏油先輩に堕ちる ページ39
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夜の10時。
柄にもなく緊張しながら、一応片付けた寮の自室で待っていれば、小さく響いたノックの音。
すぐにソファから立ち上がり、ドアを開ける。
『……任務お疲れさまでした、夏油先輩』
「いや? 任務終わりにAの顔が見られると思ったら、疲れも感じないよ」
相変わらずそんな言葉を囁く夏油先輩に笑い返し、部屋の中へと促す。
何度か入られた(←)ことはあっても、自分から招いたのはこれが初めてだった。
『先輩、コーヒーでいいですか?』
「ああ、ありがとう。ブラックでお願いしたいな」
『了解です』
インスタントですけど、と断ってから湯気の立つマグカップを手渡せば、もう一度繰り返されたお礼。
自分の分もローテーブルへと置いて、ぺたんとカーペットに座った。
「隣に座ればいいのに」
『そのソファ小さいんですもん』
「Aとくっついて座れるのは嬉しいけど、私は」
そう言いながら、片目をつぶってみせた先輩に苦笑する。
やっぱり余裕そうに見えるんだよなあ、今夜も。
コーヒーをひと口含んでから、「それで」と夏油先輩はマグカップを置いた。
「わざわざAが私を、自分の部屋に呼び出してきたということは……」
大事な話なんだろう?と。
その早い理解で私へ、本題に入るきっかけをくれるのがこの人だから。
やっぱり私は安心して頷く。
『………自分なりに考えました。先輩達とのこと』
「うん。………それで、答えは出たかい?」
あくまで優しく尋ねる声に、もう一度こくりと頷いて肯定する。
そうしてほんの少し、背筋を伸ばした。
大丈夫。
自分のこの気持ちをそのまま、伝えれば良いだけ。
『ほんと少しずつですけど………先輩達への意識は私、これでも変わってきてて』
「……ああ。私達も、それは感じていたかな。嬉しい傾向だったけれど」
私は単純だ。
特に夏油先輩からは、わかりやすかっただろうと苦笑した。
軽く息を吸い込んで。
『………私、夏油先輩に甘やかされるの………好きなんだなって』
今はそう思ってますと、ひと息に続ける。
ちゃんと目を見て、伝えなきゃいけないとは思うのに。
どうにも恥ずかしくて、つい。
俯きながらではあったけれど。
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ひよ(プロフ) - ナミさん» ナミ様、こちらの話し作品にまでコメント頂き、本当にありがとうございました!嬉しかったです♥️ (2023年4月8日 14時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します。すごく面白かったです!最後まで面白いです!!最高です(^^) (2023年4月8日 10時) (レス) @page50 id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - みーちゃんさん» みーちゃん様、はじめまして!完結済みのこちらにコメントして下さって本当にありがとうございます♥️ めちゃくちゃ嬉しかったです!お気に召して頂けたようで、光栄です! (2023年3月27日 16時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃん - 最高過ぎます...。オチが夏油サマと五条サマが交互にいらっしゃる(語彙力)のが最高過ぎますしTT最後の話もおもろくて最高···尊い (2023年3月27日 15時) (レス) @page50 id: 242dc6d800 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 夜月さん» 夜月さま、最後の最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました♥ 頂けたコメントのおかげで、何度助けられたかわかりません…!私もこの夢主、書きやすかったです(笑) また気が向かれましたら、新作も宜しくお願い致します! (2023年1月23日 20時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
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