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普段はあまり目にしないその表情に、思わず息を飲んで。
茶化すこともままならないまま、五条先輩の言葉を待った。
「いくら最強でも…………他人の気持ち、っつーのはどうしようもねえんだよな」
『………え?』
「もし俺に、そこまで手出しできるような力があんなら…………とっくにAを、」
______俺だけのもんにしてる。
『っ、』
「そう考えりゃ、本当の最強はAかもなー」
『……そんな訳ないでしょ……』
動揺半分、呆れ30%でかろうじてそう返した私の右手は、五条先輩の左手に包まれる。
ああまたこんな簡単に、手なんか繋いじゃって。
恐らくは熱の上がった私の頬も、その六眼にはお見通しなんだろう。
私の顔を見て、嬉しそうに上がったその口角にはやっぱり、悔しくなってしまったのだった。
数年振りのスケートは、正直かなり楽しかった。
小さな子供みたいにはしゃいで、何なら五条先輩と勝負(?)までして遊んだ。(そして監視員さんに怒られた)
楽しい時間が過ぎるのは、本当に速い。
「お、もう2時間か。ちょっと早えけど、メシ行く? 腹減っただろ」
『あーもう5時なんだ……暗くなってきましたもんね。めちゃくちゃ滑ってたのウケる』
「面白いとな、時間過ぎんの速えーよな」
無邪気に笑った五条先輩が、私と同じそんな感想を口にしたから、やっぱりつられて笑ってしまう。
そうなんだよな。
夏油先輩は大人(?)の余裕でエスコートしてくれて、それはすごく心地良い。
五条先輩は同じ目線というか、一緒に馬鹿なことも出来て楽しい。
二人それぞれに、違う魅力があって。
(……いやなんて言うか……贅沢が過ぎる悩みなんよ…)
この二人の内、どちらを選ぶとか。
私なんかがそんなこと。
知らず知らずの内に難しい顔でもしていたのか、五条先輩は小さく笑ってから、私の眉間を指で軽く押してくる。
「………何こ難しいこと考えてんのか知らねーけど、せっかくのデートなんだから」
いつもみてえに笑ってろよ、なんて本当。
『先輩、私お腹空きました!』
「おー俺も。靴返して早く店行こうぜ」
にかっと笑った五条先輩に、私も負けじと笑った。
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ひよ(プロフ) - ナミさん» ナミ様、こちらの話し作品にまでコメント頂き、本当にありがとうございました!嬉しかったです♥️ (2023年4月8日 14時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します。すごく面白かったです!最後まで面白いです!!最高です(^^) (2023年4月8日 10時) (レス) @page50 id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - みーちゃんさん» みーちゃん様、はじめまして!完結済みのこちらにコメントして下さって本当にありがとうございます♥️ めちゃくちゃ嬉しかったです!お気に召して頂けたようで、光栄です! (2023年3月27日 16時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃん - 最高過ぎます...。オチが夏油サマと五条サマが交互にいらっしゃる(語彙力)のが最高過ぎますしTT最後の話もおもろくて最高···尊い (2023年3月27日 15時) (レス) @page50 id: 242dc6d800 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 夜月さん» 夜月さま、最後の最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました♥ 頂けたコメントのおかげで、何度助けられたかわかりません…!私もこの夢主、書きやすかったです(笑) また気が向かれましたら、新作も宜しくお願い致します! (2023年1月23日 20時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
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