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参道の脇には色とりどりの屋台の看板。
お祭りじゃ皆で死ぬほど食べたな、なんて思い出して、つい笑った。
「あの日はよく食べたなあ」
そんな風に同じ感想を漏らした先輩に驚いて、ついその顔を見上げる。
ん?と顔を傾けられ、吹き出しながら説明した。
『いや今、全く同じこと私も考えてて』
「ああ、それで笑ってたのか。皆で楽しかったね」
うんうんと頷けば、でも、と。続きが。
「………今日は私がAを独り占めできて、もっと楽しいし、嬉しいよ」
片目なんてつぶられたら、どうすればいいんだろう。こっちは恥ずかしいくらいの恋愛ビギナーなんだが。
ぐぬぬぬぬ、と小さく唸った私に夏油先輩はまた笑って、繋いだ手を軽く引いたのだった。
人の波を縫って参拝も終え。
他愛もない会話をしながら電車を乗り継げば、どうやら目的地へと着いたらしい。
『ア………ア、ア………ッ!』
「某ジ○リ映画の、某キャラみたいな反応になっているよ」
それカ○ナシのことかな?
実は自分でもちょっとそう思った、とはあまり言いたくないけれども。
いやでも語彙を消失したら、誰でもそうなると思うよ……!
『このお店って、』
「前に、行ってみたいって話してなかったかい?」
そこは都内でも超が付くほど有名な、老舗の洋食レストランで。
確かにいつだったか、スマホで紹介記事を見て騒いだ記憶はあった。でも。
『……知ってたんですか……?』
私の
「まあね。好きな子へのポイント稼ぎのために、情報収集は欠かさないよ」
ぱちりとまた左目を閉じてから、「入ろう」と夏油先輩は私を促す。
高級ホテルとまではいかなくても、その雰囲気は敷居が高めだ。
それにしても、「好きな子」って。
いきなりそういうことをさらりと言わないで欲しい。さっきからちょいちょい、心臓に悪い。
「ふふ、緊張しているのかい?」
『さすがに高校生だけで入るようなお店じゃないのは、私でも理解してます』
「大丈夫だよ、私に任せて」
軽く気後れした私の頭を、問題ないという風に軽く撫で、夏油先輩は穏やかに笑う。
その一連の動作に妙に安心させられ、お店の人に案内されるまま、席へと向かった。
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ひよ(プロフ) - ナミさん» ナミ様、こちらの話し作品にまでコメント頂き、本当にありがとうございました!嬉しかったです♥️ (2023年4月8日 14時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します。すごく面白かったです!最後まで面白いです!!最高です(^^) (2023年4月8日 10時) (レス) @page50 id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - みーちゃんさん» みーちゃん様、はじめまして!完結済みのこちらにコメントして下さって本当にありがとうございます♥️ めちゃくちゃ嬉しかったです!お気に召して頂けたようで、光栄です! (2023年3月27日 16時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃん - 最高過ぎます...。オチが夏油サマと五条サマが交互にいらっしゃる(語彙力)のが最高過ぎますしTT最後の話もおもろくて最高···尊い (2023年3月27日 15時) (レス) @page50 id: 242dc6d800 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 夜月さん» 夜月さま、最後の最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました♥ 頂けたコメントのおかげで、何度助けられたかわかりません…!私もこの夢主、書きやすかったです(笑) また気が向かれましたら、新作も宜しくお願い致します! (2023年1月23日 20時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
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