番外編 2 : 夏油先輩とデート ページ29
・
慌ただしいまま気づけば年は明け、今日はいざ決戦の日だ。さあ、まずは一人目。
「待たせてしまってごめんね。明けましておめでとう」
いつもより静かな寮の共有スペース、まだ冬休み中の午前10時。そこへゆったりと一人、現れたのは＿＿＿＿
『明けましておめでとうございます、夏油先輩』
夏油先輩はソファから立ち上がった私に、柔らかな視線を向けて。
「行こうか」とごく自然な動作で、私の右手を取った。
「ところで、Aのお腹の空き具合は？」
『歩き出して速攻それ聞かれる私の食い意地って、やっぱやべえですね』
(自分に関する)素直な感想を述べれば、隣を歩く夏油先輩は小さく吹き出す。
「ごめん、そういう意味で聞いた訳じゃないんだ。このまま先に初詣に行こうと思うんだけど、ランチの時間を考えておきたくて」
『うーわ、さすが……！』
予想はしてたけどスマートだ、女慣れというかデート慣れというか。
マメな男ってモテるんだろうしな……
だからたった今、ごくごく自然に繋がれてしまった手も。振りほどくタイミングが掴めないままで。
『朝もしっかり食べる派なので、さすがにまだ大丈夫です』
「じゃあ初詣の後でも良さそうだね。店は見当をつけてあるから」
お願いします、と頷けば、何だか嬉しそうに微笑んだ夏油先輩。
完全プライベートだからだろうか、普段あまり目にしない私服も相まって、更に大人びて見えた。
(余裕、あるんだよなあ…………いつも)
歳はひとつしか変わらないというのに、夏油先輩にはいつも、踊らされてばかりで。
何をしても敵わないことだって、もうとっくに。
(それも最近は………本気で嫌、って訳じゃ)
夏油先輩とセクハラ抜きで会話をするのは、実を言うと嫌なわけではなかった。
話題も豊富だし、話していて楽しいことも多くて。
結局、レベル違いのめちゃくちゃ強い人が、何を考えて自分なんかを構ってくるのかが理解できなかったから。
私はずっと、怖がっていただけなのかもしれない。
「まだそこそこ、人出があるね」
『ほんとだ。まあ確かに、三が日明けたばっかですもんね』
高専から最寄り駅までの途中に、この辺りではまあまあ有名な神社がある。
そこは夏の終わりに皆で行った、お祭りがあった場所だった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 432人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひよ(プロフ) - ナミさん» ナミ様、こちらの話し作品にまでコメント頂き、本当にありがとうございました！嬉しかったです♥️ (2023年4月8日 14時) (
レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します｡すごく面白かったです!最後まで面白いです!!最高です(^^) (2023年4月8日 10時) (レス) @page50 id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - みーちゃんさん» みーちゃん様、はじめまして！完結済みのこちらにコメントして下さって本当にありがとうございます♥️ めちゃくちゃ嬉しかったです！お気に召して頂けたようで、光栄です！ (2023年3月27日 16時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃん - 最高過ぎます...。オチが夏油ｻﾏと五条ｻﾏが交互にいらっしゃる（語彙力)のが最高過ぎますしTT最後の話もおもろくて最高···尊い (2023年3月27日 15時) (レス) @page50 id: 242dc6d800 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 夜月さん» 夜月さま、最後の最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました♥ 頂けたコメントのおかげで、何度助けられたかわかりません…！私もこの夢主、書きやすかったです(笑) また気が向かれましたら、新作も宜しくお願い致します！ (2023年1月23日 20時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
