65 : いつも通りに ページ23
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「お、」
硝子先輩と別れ、とぼとぼ廊下を歩いていればすぐに感知した、大きなその力。
案の定、予測した通りの人物が現れ、一声発する。
『あー………お疲れさまです、五条先輩』
「ん、まじ疲れた」
だから癒やしてA、と大きく広げられたその腕は、とりあえず軽くはたいてやった。
五条先輩はそれに舌打ちこそしたけれど、サングラスの下の蒼は多分、笑っているんだろう。
あの宣言の日からは出来る限り最強ズを避けていたし、この前のハロウィンパーティは皆も居たし。
だから五条先輩と二人きりになるのは、少し久しぶりな気もする。
「お前何かちょっと暗くね? 最近」
『誰のせいだと思ってんですか』
恨みがましい口調でツッコめば、喉奥で密やかに笑った。
つかさあ、とその高い位置の腰を私へと折り曲げ。
「そんなに悩む? 傑か俺か」
『……二択以外の選択肢も欲しい、ってのが、一番の本音ですけど』
「別に俺ら、急かしてねーし」
んなあからさまに避けなくても良くね?、と。
サングラスを外した先輩の蒼からは何だか、いつもの強気な色が消えているようにも見えて。
(何で、そんな顔するの……?)
驚いた私は瞬間_____何も、言えなくなった。
" でもAがはっきり突っぱねないのは、何でだろうね? "
ついさっき、硝子先輩に言われたセリフをふと思い出す。
体感ならたっぷり30分、恐らくは60秒にも満たないであろう沈黙の後。
五条先輩は綺麗な白髪を、くしゃりと掻き上げた。
「お前はさ、いつも通りにしてりゃいんだって」
『……いやどの口が言うんですか。選べ、って言ったの五条先輩でしょ』
" いつも通りに " なんて出来るはず、ない。
だって私はようやく最近、理解が追いついてきたところなのに。
「それはそーだけど」と相槌を打ってから、五条先輩は大きめの溜息をつく。
そうして私へとまた、蒼を真っ直ぐに合わせ。
「ようやく意識されたんは………ま、悪かねーけど。お前と普通に話したり出来なくなんのは、」
しんどいんだよ正直、という細い音での呟きに。
思わず私が抱いてしまったのは、罪悪感というものに近い感情だった。
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ひよ(プロフ) - ナミさん» ナミ様、こちらの話し作品にまでコメント頂き、本当にありがとうございました!嬉しかったです♥️ (2023年4月8日 14時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します。すごく面白かったです!最後まで面白いです!!最高です(^^) (2023年4月8日 10時) (レス) @page50 id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - みーちゃんさん» みーちゃん様、はじめまして!完結済みのこちらにコメントして下さって本当にありがとうございます♥️ めちゃくちゃ嬉しかったです!お気に召して頂けたようで、光栄です! (2023年3月27日 16時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃん - 最高過ぎます...。オチが夏油サマと五条サマが交互にいらっしゃる(語彙力)のが最高過ぎますしTT最後の話もおもろくて最高···尊い (2023年3月27日 15時) (レス) @page50 id: 242dc6d800 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 夜月さん» 夜月さま、最後の最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました♥ 頂けたコメントのおかげで、何度助けられたかわかりません…!私もこの夢主、書きやすかったです(笑) また気が向かれましたら、新作も宜しくお願い致します! (2023年1月23日 20時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
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