Day 16 ページ30
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せっかくの実弥さんとのお出掛けだと、メイクにも服にも気合いを入れて仕度を終えた。
連れ立って最寄り駅から電車に乗り込み、途中で一度、地下鉄へと乗り換える。
土曜の午前、車内はそれなりに混んではいるけれど、いつもの朝のラッシュの比ではない。
一緒にドア近くに立つ実弥さんは、窓に流れる景色を眺めていて。
その横顔があまりに格好良かったから、私はずっと、実弥さんを見つめてしまっていた。
『……わっ、』
「……っ、ぶね」
次に着いたターミナル駅で多くの人が乗り込んできて、押された私はほんの少し、バランスを失い____
『………ああああ今ワタシ風柱に抱かれちゃってるゥゥゥ……!』
「小声なンは褒めてやるが、言い方には気ィつけろっつってンだろォ」
よろけたところを抱きとめて(!)くれた実弥さんは、私の頭上でお約束の溜息をついた。
(あったかい………しかも何か良い匂い………)
風柱は、お香とかに頼らずとも良い香りがすると善きって願望があるんだけど、結構当たってるかも。
何だろね。稀血効果??
『………(スンスン)』
「嗅ぐなァ。それと必要以上にひっついてンじゃねェ」
『そんなご無体な……!』
私をひっぺがそうとする、実弥さんとのささやかな攻防を繰り返している内に。
「次は京橋」というアナウンス。
『あーあ……着いちゃった……』
「お前今日は、俺の行きてェ場所に俺を連れていく、っつうのが目的じゃねェンか」
『それはそうなんだけど………風柱にくっつけるなんて絶好の機会、逃したくないじゃん……』
未練がましくブツブツ呟く私の頭を、実弥さんは苦笑しながら軽く叩き。
「ンなことより頼むぜェ、案内役」
そうして、ひどく優しく微笑むから。
『っ、お任せ下さい!』
勢い込んで返事をした私に実弥さんは声を上げて笑い、私はそれが本当に本当に嬉しくて。
くすぐったいような気分で、構内を歩き出した。
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ひよ(プロフ) - ツナミカワさん» ツナミカワ様、はじめまして!完結からだいぶ経っているこんな作品にコメントを頂き、本当にありがとうございます(泣) 個人的にはバドエンも嫌いではないのですが←、現世での救済はできればしたいと考えて書いています…!また何かのお話でお会いできれば光栄です♥ (3月2日 9時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ツナミカワ(プロフ) - バッドエンドになりそうで泣いてたのにそこからハッピーエンドで好きって言われたら泣かずにはいられなかった (3月1日 18時) (レス) @page45 id: 8933f39901 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - ☆雪☆さん» アニメ柱稽古編の発表もありましたし、また何かネタが浮かびましたら実弥さんも書きたい気持ちはあります。その際もし見つけて頂ければ、またお会いしたく。ありがとうございました♥ (12月11日 21時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - ☆雪☆さん» ☆雪☆さま、はじめまして!こんな完結済の話に、恐縮してしまうほど光栄なコメントを本当にありがとうございます!(泣) 今年の実弥さんの生誕も、「アラカルト短編集」という作品の中でお祝いしておりますので、お暇時間にでも覗いてやって下さい…! (12月11日 21時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
☆雪☆(プロフ) - 他の作品も色々と読ませて頂いて、ひよさんの描く実弥さんが好きで楽しく読ませて頂いてます。またこれからも読ませて頂きますね。 (12月11日 18時) (レス) id: dd2cbdffb8 (このIDを非表示/違反報告)
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