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終わったな、これ。
いくら好きな男とはいえ、ただの家主がヒモ(であることは多分、彼自身も否定しないだろう)に言って良いセリフじゃなかった。うん。
結構本気で嫉妬したことだって、責めるにしても、もう少し上手く___
「……い………おい、」
A、と名前を呼ばれ、節の目立つ指に、頬を軽くつままれ。
いつの間にか、自分が相当うつむいていたことに気づく。
意識して顔を上げれば、はあ、と隣からも溜息の気配。やっぱダメだ、失敗した。呆れられた。
『………もう、出てく?』
何て弱々しい声。
私にもこんな声、出せたんだなあ。
ああ、と肯定のような、それともただの相槌のような音が、彼の口元から発せられる。
身体中に力が入った。
「お前が出て行け、っつうならしゃあねぇわな」
『何それ。ずるい』
「決定権なんざ、俺にねぇよ」
そんな風に言いながらも、すりすりと頬を撫でてくる指先が優しくて、つい泣きそうになる。
『………まだここに居て、って言ったら?』
ああ。
こういうことを自分から言っちゃダメなのに。
肩に回された腕に力が入り、彼の胸に引き寄せられた。同じボディソープを使っていても、彼から香るそれは微妙に、違う印象で。
すう、とその匂いを吸い込んだ。
「お前がそう言うなら、居るだけだろ」
『えっ……?』
「あ?」
驚くとこか?と眉を寄せた好みの顔を、まじまじと見つめてしまう。
確かに私は家主で、私が「出て行け」と言えば、彼は躊躇なく出て行くんだろう。本人が言った通り。
でも。
いくら私がここに居て欲しくたって、彼を縛れる権利も立場も、私は持っていない。
彼の意思で出て行くのは自由だ。
自由なはず、なのに。
『……私の言うこと、聞いてくれんの?』
未だ驚きを持って呟くように問いかけた私に、彼はもう一度大きく、溜息をついて。
「何をさっきから、一人でごちゃごちゃ考えてんだ。らしくねぇ」
むに、と先程より強めに、私の頬をつまんだ。
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ひよ(プロフ) - まる麺さん» まる麺さま、はじめまして!コメントありがとうございますめちゃくちゃ嬉しかったです♥ ぶっ通し…!眼精疲労は大丈夫でしょうか、、でも胸焼けして頂けたようで良かったです😭 (10月29日 11時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
まる麺 - 最初から最後までぶっ通しで見ましたが甘々で胸焼けしますね!とっても良いです!素晴らしい作品をありがとうございます! (10月29日 3時) (レス) @page38 id: 1349e0699e (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - ナミさん» つまり、メアド要の「ログイン」をしなければのりません。ナミ様の下記の端末ですと非ログとお見受けしますので、、そちらからでは閲覧できないかと思います。大変申し訳ありませんが、可能ならログインしてプロフィールを取り、設定をお試し下さいませ! (2023年4月8日 14時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - ナミさん» ナミ様、はじめまして!コメありがとうございます♥️ 嬉しかったです!こちらの続編ですが、アール18フラグを立てているため、アール18作品を閲覧できるように、マイページ→設定→コンテンツの設定にて「18歳以上ですか?」に「はい」のチェックが必要です。 (2023年4月8日 14時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - 初コメ失礼します!すごく面白かったです!質問なのですが,続編ってどうすれば見れますか?分からなくて…,もしよろしければ教えてください!! (2023年4月8日 11時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
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