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「はい、どうぞ」
『あ、ありがとう……』
差し出されたカップを受け取ると、すぐに香る甘いカカオ。温かなそれを一口含めば少しだけ、緊張が解ける気がした。
高専生は基本、寮で生活するらしい。
食堂や談話室のような共有スペース、それぞれが与えられる私室があり。
「僕の部屋に入ったの、初めてだよね」
高専には、基本が校内への用事で来るわけだから、寮まで入ることはほとんどない。
談話室で、先輩達とお喋りしたくらいだ。
だから今はどうにも、緊張していた。
憂太くんの部屋はすっきりと片付いていて、窓辺にさり気なく置かれた小さなサボテンが、何となく彼らしいと思う。
「もしかしてAちゃん……」
緊張してる?と突然耳元で囁かれ、思わず肩が跳ねた。いつもよりだいぶ、距離が近くて。
『………うん』
「可愛い」
こっち向いてと続けた彼の方へ顔を傾ければ、頬に添えられる、少しかさついた手。
その指はマメの跡だらけだ。
Aちゃん、と柔らかく呼ばれ、期待が高まる。
「好きだよ」
その言葉を初めてもらったのは、ひと月ほど前。
自分の大好きな人から贈られたそれは、私を一瞬で舞い上がらせた。もちろん、今だって。
私も、とか細い声で応じれば、そのまま重ねられた唇。初めてのキスだ。
数回繰り返されるそれを、うっとりとしながら受け入れた。
『っ、………?』
「……じっとしててね。いい子だから」
一度離れた唇は、そのまま私の鎖骨へと落とされる。抵抗する間もなく、吸い上げられた刺激にただただ驚いた。
『ゆ、うたくん………何……?』
私の問いかけに、彼はそこから顔を上げ。
ごめんと一言。
「……Aちゃん、気づいた? さっき僕が君を、呼び捨てにしてたのとか」
『あ……』
「今のこれも全部……………独占欲だよ、僕の」
独占欲、と頭の中で繰り返してみれば。
その意味を理解できた次の瞬間、私の心臓は面白いほどに、跳ね上がった。
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ひよ(プロフ) - まる麺さん» まる麺さま、はじめまして!コメントありがとうございますめちゃくちゃ嬉しかったです♥ ぶっ通し…!眼精疲労は大丈夫でしょうか、、でも胸焼けして頂けたようで良かったです😭 (10月29日 11時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
まる麺 - 最初から最後までぶっ通しで見ましたが甘々で胸焼けしますね!とっても良いです!素晴らしい作品をありがとうございます! (10月29日 3時) (レス) @page38 id: 1349e0699e (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - ナミさん» つまり、メアド要の「ログイン」をしなければのりません。ナミ様の下記の端末ですと非ログとお見受けしますので、、そちらからでは閲覧できないかと思います。大変申し訳ありませんが、可能ならログインしてプロフィールを取り、設定をお試し下さいませ! (2023年4月8日 14時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - ナミさん» ナミ様、はじめまして!コメありがとうございます♥️ 嬉しかったです!こちらの続編ですが、アール18フラグを立てているため、アール18作品を閲覧できるように、マイページ→設定→コンテンツの設定にて「18歳以上ですか?」に「はい」のチェックが必要です。 (2023年4月8日 14時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - 初コメ失礼します!すごく面白かったです!質問なのですが,続編ってどうすれば見れますか?分からなくて…,もしよろしければ教えてください!! (2023年4月8日 11時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
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