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よく晴れた朝。
バシッ、と小気味よい音が、冷たく乾いた空気に響く。
「っ、………だっ!」
「また私の勝ちだな。顔洗って出直してきやがれ」
地面に転がった乙骨くんの脇腹を、転がした張本人の真希ちゃんが、手にした武具で突いている。
休憩中のパンダくんと二人で、容赦ないねと笑いあった。棘くんは任務に出向いている。
勝負はもう一本続くらしく、乙骨くんは立ち上がり、武具を構えた。
「戻ってきたな、Aも」
『え? 何が?』
隣から発せられた、パンダくんの独白のようなものに、思わず聞き返す。
パンダくんは、軽く肩を竦めてみせた。
「笑顔。これでも心配してたんだ、俺達」
『ん………ありがとう。ごめんね』
何なら私よりも強いとはいえ、後輩に心配をかけてしまっていたことは、わかっていた。
だから乙骨くんも、あの日。
ミルクティーを片手に。
………………僕らと一緒に居ませんか? これからは。
その申し出はひどく唐突だと思ったけれど、簡単に私は乗った。
だって一人は寂しい。
「秤のことだ…………Aを巻き込みたくなかったんだろ」
『……多分ね。綺羅羅は、金ちゃんが何て言っても付いていくし』
「ちゃんとわかってんのな、お前」
わかってるって言えば、とパンダくんは、乙骨くんと真希ちゃんへ視線を投げる。
「憂太が一番、心配してた。お前のこと」
『乙骨くん?』
「アイツもここ入る前は、色々あったんだろうよ」
何せどえらいの連れてたから、という考察には、頷いておいた。
でも多分、だから。
『私が寂しがってるの、すぐ気づいてくれたのかも』
「ケッ………俺らもそこまで遅れちゃねーぞ」
『ふふ、わかってるよ』
そうして私達はまた揃って、立ち合いを続ける二人を眺める。
真剣ながら、それは楽しそうにも見えて。
この苦しさには覚えがあった。
「………あー、うん。………でもまだ、Aにも脈ありだろ」
『………何の話?』
「あんな無害そうな面して、実はアイツ巨乳派」
ヒッヒッヒ、と下衆く笑ったパンダくんの背中にはさすがに、一撃を見舞っておいた。
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ひよ(プロフ) - まる麺さん» まる麺さま、はじめまして!コメントありがとうございますめちゃくちゃ嬉しかったです♥ ぶっ通し…!眼精疲労は大丈夫でしょうか、、でも胸焼けして頂けたようで良かったです😭 (10月29日 11時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
まる麺 - 最初から最後までぶっ通しで見ましたが甘々で胸焼けしますね!とっても良いです!素晴らしい作品をありがとうございます! (10月29日 3時) (レス) @page38 id: 1349e0699e (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - ナミさん» つまり、メアド要の「ログイン」をしなければのりません。ナミ様の下記の端末ですと非ログとお見受けしますので、、そちらからでは閲覧できないかと思います。大変申し訳ありませんが、可能ならログインしてプロフィールを取り、設定をお試し下さいませ! (2023年4月8日 14時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - ナミさん» ナミ様、はじめまして!コメありがとうございます♥️ 嬉しかったです!こちらの続編ですが、アール18フラグを立てているため、アール18作品を閲覧できるように、マイページ→設定→コンテンツの設定にて「18歳以上ですか?」に「はい」のチェックが必要です。 (2023年4月8日 14時) (レス) id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - 初コメ失礼します!すごく面白かったです!質問なのですが,続編ってどうすれば見れますか?分からなくて…,もしよろしければ教えてください!! (2023年4月8日 11時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
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