《後編》改）言えない師範と言わない継子【不死川実弥】

78 : 祝福の日 ページ39

side 宇髄天元






ほう、という感嘆を思わず漏らしたのは、オレだけではなかったらしい。



産屋敷邸の一角、広い広い座敷に姿を現した今日の主役＿＿＿＿特に花嫁のそれ。


白無垢に身を包んだAは、お世辞抜きで綺麗だった。



(………元々可愛い顔してんのは、知ってたがなあ)



鬼狩りしてる時のお前はホント、勇ましかったからよ。


んな楚々としたおしとやかな姿なんざ見んの、初めてなんだわ。

それはお前の師匠も多分、同じだろうが。



(ド派手に綺麗だぜ、A)



もう「不死川」になった彼女を、これからは下の名で呼ぶならば、その夫はきっと面白くない顔をするだろうと想像して笑いが漏れる。














2人が結婚すると報告してきたのは、鬼殺隊が解散して、まだ日も浅い頃。





(んで、いつから恋仲に進展してたって？)



産屋敷邸での報告会から数日後、ゆっくり酒でもと不死川を呼び出したのは当然、その辺りを聞き出すためで。


口の滑りを良くしてやるべく、何度も杯を干させた不死川の頬は、既に赤く染まっていた。



(恋仲、っつうか………無惨戦の前に、Aから言われててなァ。………鬼を滅したら、嫁に貰ってくれってよ)


(はああ?! ………ド派手だなアイツ、自分から求婚ときたか)



「求婚とまでは言えねェが」と呟いてから、不死川は少し口籠るような素振りを見せ。



(……だからまァ………鬼を滅して、鬼殺隊も円満解散できたしな。………オレからも、言った)


(なんて？)



こちらが聞きたい肝心な部分を濁した不死川へと、そんな率直な問いを投げれば。



(結婚してくれ、っつったに決まってンだろォ！ 話の流れ読めやテメェ!!)






その後もちろん殴られはしたが、まあ…………嬉しかったわけだ。オレも。


この観察眼に優れたオレ様としちゃ前から、Aと一緒にいる不死川を盗み見んのは、悪かなかった。



怒ると誰彼構わず噛みついていくような、あの不死川が。


Aと話している時は、それなりに歳相応のツラなんざしやがるから、何だか微笑ましくて。



「アホォ」とは言いながら案外楽しそうに見えたアイツには、Aが必要かもと、こっそり思っていた。



だから遊郭潜入任務にAを借りるのは、正直ためらいがあったのだ。


このオレでも。




まあ、そこでAの闘う意思を尊重した辺り………………やっぱりアイツは根っから、鬼殺隊の柱だったけれど。



・

79 : 幸せだと言うのなら→←77 : 8歳に諭されました

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す