《後編》改）言えない師範と言わない継子【不死川実弥】

76 : ご挨拶@産屋敷邸 ページ37

side 不死川実弥






何でテメェまで居やがる、というセリフは辛うじて飲み込んだ。



いくら鬼殺隊は解散したといえ、ここは産屋敷邸。


目の前に愛らしい笑顔で座るのはその、現・当主なのだから。


それにしても、妹君お2人はともかく＿＿＿



「うーわお前、あからさまに嫌そうな顔すんなよ」



輝利哉様達の後方、ニヤニヤと下卑た笑みを隠そうともしないのは、元・音柱。

覚えてやがれと、心の中で舌打ちする。



「………輝利哉様、くいな様、かなた様におかれましては、本日もお元気そうなご様子で何よりです」


「無視デスカ」


『ん"っっふ、…………すみません……』



宇髄の悪ノリに堪えきれず吹き出したAを睨みつけてやれば、前方から漏れるひそやかな笑い声。



「ふ、くくく…………すみません、実弥さん」



ようやく歳相応に笑えるようになった、輝利哉様達を見られるのはもちろん、喜ばしいが。



「天元さんを責めないであげて下さい。僕達の後見役でもありますので」


「そうそう。お前らが揃って産屋敷家に挨拶に来るっつうからよ。面白そ、じゃねえ………後見役としちゃ同席しねえと、ってな？」



ははは！と悪びれもせずに笑う宇髄には、後で一発お見舞いすることにして。

まずは本題を。



気持ち姿勢を正せば、隣に座るAも慌てたように背筋を伸ばした。


宇髄の前というのは、甚だ遺憾ではあるが。



「本日は輝利哉様達へ、ご報告させて頂きたいことがございまして………お時間を頂戴したのですが」



にっこりと微笑んだまま、はい、と応じられたのを確認してから、一息に告げる。



「この度…………私とAAは、結婚する運びとなりました」


『今後とも、どうぞ宜しくお願い申し上げます』



そうして揃って頭を下げれば。

すぐにパンパンと響いた、軽やかに手を打つ音。



「やーっとくっついたか。遅えんだよ、地味な奴らめ」


「本当におめでとうございます、実弥さん。Aさんも」


「「おめでとうございます……！」」



拍手と共に送られた、それぞれからの祝福の言葉に。


照れくさいようなむず痒いような何とも言えない気分で、もう一度。



4人にお礼を述べてから、頭を下げた。



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