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74 : 桜の花びら、舞う中で ページ35








冨岡さんとまた会う約束をして、別れた帰り道。


数歩先を歩く師範に追いつくと、思いきってその左手を掴まえてみせた。



『ご機嫌よろしくないようですね』


「………別にィ。 お前が冨岡ホメたとか、勝手にまた会う約束しやがったとかァ? ンなのオレはどうでも」


『え、わかりやす過ぎて逆に怖い………冨岡様とお会いする時はもちろん、師範も強制的にご一緒して頂きますけど」


「たりめェだろォ。冨岡と2人きりなんざ、誰が許すかよ」



ぎゅぎゅ、と強く握り返された感触に、生きてて良かったと改めて思う。


この温かくて優しい手に、こうして触れられる時がくるなんて。





柔らかな春の風が吹く川沿い、満開の桜の木が立ち並ぶのは、まるで夢のように美しい景色だった。


ふと、こんな風に桜を眺めたのはいつ以来か、なんて考える。

どんな季節も、私達は鬼を狩ってきたから。





「………受け取れェ」



師範の声で桜から視線を戻せば、鼻の先、ビロード張りの小箱が差し出された。


師範はそのまま私へと、箱を開いて見せ。



『………うわあ』



自分でも、間抜けな声だったと思う。

でも言葉を失うほど美しい緑の翡翠は、初めて見るような代物で。



「気に入ったんなら、着けてやらァ」



込み上げてきてしまったものを右手で押さえ、何度も頷く私に小さく笑った師範は、それを私の髪へと優しく挿した。



「………あン時、お前が言ったんだぞ。女に簪を送る意味………覚えとけってなァ」



いつだったか、蜜璃への贈り物を選んでいた伊黒様に会った時。

そんな話をしたことを思い出す。



『………はいっ……』


「そもそも………先に求婚してきたンは、お前だぞ。今更やめた、っつうンは認めねェ」



フン、と鼻を鳴らす師範の顔は、滲んでしまっているけれど。



『………自分の、言葉にはっ……ちゃんと責任、持ちます、よっ……』


「ハ、それでこそ……………元・風柱の継子だ」



私の身体はふわりと、その逞しい腕に抱きこまれた。


覚えている師範の香り。

硬い胸に押し付けられて、強く強く抱きしめられて。






………………ああ、やっぱり夢じゃないかなんて。



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設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥 , 風柱   
作品ジャンル:恋愛
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ひよ(プロフ) - すみっことかげさん» すみっこさん、こんにちは! お忙しいのに一気読みまでして頂き、、申し訳なさとありがたさで泣いています…!ちょっと……師匠とは誰のことかわかりかねますが(すっとぼけ)、私もすみっこさんのお話を応援しておりますので、更新頑張って下さい♡ (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - はなちゃんさん» はなちゃんさん、こんにちは!コメントありがとうございます! すっごく嬉しいです♡ 「とっくに」まで読み返して頂いたとは……キャラ同士の掛け合いは意識して書いているので、そんな風に感じて頂けるのは本望です…!また友限のお話でお会いしましょう♡ (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 凜音さん» 凛音さま、はじめまして!コメントありがとうございます♡ 読んで頂いた上、そんな風に言って頂けて泣きそうです…! はい、私も凛音さまに新作通知を出せるよう、妄想に励みますね!(変態っぽくてすみません)またお会い出来ることを楽しみにしています! (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 那拓さん» 那拓さま、はじめまして!コメントありがとうございます嬉しいです♡ おお、原本の方もお読み頂いたんですか、、読みにくくて申し訳なかったですが(泣)、、そんな風に言って頂き本当に嬉しいです! (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» 本当に忙しい時だったのに、、読んでくれてありがとうございました(泣) そうね、師範の連載終えた頃にレッド2にコメ行ったんだよな、確か。あの頃は、まさかキミとこんな関係性(意味深)になれるとは思っていませんでした…!! 内容まで覚えててくれて愛しかねえ!! (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよ | 作者ホームページ:ありません  
作成日時:2022年6月19日 10時

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