72 : 見せたかったよ ページ33
・
身体の傷は、時と共に癒えていけども。
心が癒えるのは簡単ではなく、そもそも癒えることすらあり得ないのかもしれないが。
ふとした時に、喪った人達を想う。
それも供養のひとつかと気づいたのは、つい最近のことだ。
…………………季節は春。
あの最終決戦からもう、三ヶ月という時が過ぎた。
『やーこのメンツで一緒にご飯とか………皆に見せたかったです、ほんと』
目の前のお重にしばし没頭した後、合間に挟んだ温かいお茶をすすりながら、しみじみと呟いた。
「チッ………見られたかねェわアホォ。絶対ェ引かれまくんだろ、特に伊黒」
「………想像がつくな」
多分それに胡蝶も、と呟いたのは、左側に座る元・水柱の冨岡様だ。
私を挟んで右には師範。
3人仲良く、鰻を堪能中なのです。
産屋敷邸からの帰り道、お腹が空いた!とわめいた私に根負けした師範が連れてきてくれたこのお店、伊黒様のお薦めらしい。
それって絶対、蜜璃のお気に入りだったってことですよね伊黒様。
……………うん。やっぱ美味しい、さすがは蜜璃。
残った右手でお箸は持てても、逆の腕でお重を押さえるのにはまだ、苦労してしまう。
それでも一口頬張ってから、両隣へと視線を左右させた。
『お2人とも、左手でお箸使うのお上手ですね。………それにしても、揃って指だの腕だの………物騒な面々だわほんと』
堅気とは絶対に思われない件。
師範と私なんて、顔にもでっかい傷跡あるしさ。
つか今気づいたけど、冨岡様ってお顔つるんつるんなのね。
何それ羨ましい。
「オレが1番マシだがなァ………冨岡は厄介だったろォ、利き腕で」
「そうだな………手先は元々不器用だから、箸は苦労した」
はは、と苦笑する冨岡様を見て、笑顔が増えたなと思う。
以前は師範よりよっぽど、滅多に笑わない人だったけれど。
髪も短くなり、目を細めて笑う冨岡様はほんの少し幼くも見え、何だか微笑ましかった。
遺された私達もそれぞれきっと、少しずつ変わっているのだろうと。
そう、素直に思えた。
・
370人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひよ(プロフ) - すみっことかげさん» すみっこさん、こんにちは! お忙しいのに一気読みまでして頂き、、申し訳なさとありがたさで泣いています…!ちょっと……師匠とは誰のことかわかりかねますが(すっとぼけ)、私もすみっこさんのお話を応援しておりますので、更新頑張って下さい♡ (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - はなちゃんさん» はなちゃんさん、こんにちは!コメントありがとうございます! すっごく嬉しいです♡ 「とっくに」まで読み返して頂いたとは……キャラ同士の掛け合いは意識して書いているので、そんな風に感じて頂けるのは本望です…!また友限のお話でお会いしましょう♡ (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 凜音さん» 凛音さま、はじめまして!コメントありがとうございます♡ 読んで頂いた上、そんな風に言って頂けて泣きそうです…! はい、私も凛音さまに新作通知を出せるよう、妄想に励みますね!(変態っぽくてすみません)またお会い出来ることを楽しみにしています! (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 那拓さん» 那拓さま、はじめまして!コメントありがとうございます嬉しいです♡ おお、原本の方もお読み頂いたんですか、、読みにくくて申し訳なかったですが(泣)、、そんな風に言って頂き本当に嬉しいです! (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» 本当に忙しい時だったのに、、読んでくれてありがとうございました(泣) そうね、師範の連載終えた頃にレッド2にコメ行ったんだよな、確か。あの頃は、まさかキミとこんな関係性(意味深)になれるとは思っていませんでした…!! 内容まで覚えててくれて愛しかねえ!! (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ