《後編》改）言えない師範と言わない継子【不死川実弥】

60 : 手合わせ@ 水柱邸 ページ21

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『たのもーう!!』


「お前それ、言ってみたかっただけだろォ」



門の前、その呆れた色のツッコミは図星で、へへへと頭を掻いてみせた。

見事な竹林を抜け、師範と共に辿り着いた先は。



「………よく来たな」


「チッ………相変わらず辛気臭ェツラしやがってェ」


『こんにちは、冨岡様。今日は宜しくお願い致します！』



ああ、とあまり表情は変えずに頷いたのは、水柱の冨岡様。

ここは水屋敷である。



冨岡様に会うのはあの緊急柱合会議以来で、柱稽古には参加しないと言い放った冨岡様は、師範と一触即発状態だったけども。



『でも良かったです、冨岡様も参加されることになって』


「………遅くはなったが」


「ハ、遅過ぎンだよテメェは」



吐き捨てるように断罪した後、師範は特大の舌打ちを冨岡様にお見舞いしている。


ああ、冨岡様から捨てられた子犬感が。



『師範。確かに遅過ぎたかもしれませんけど、せっかく冨岡様も参加する気になられたんですから。そんな言い方は、』


「っ………やはり……遅……過ぎた、か」


『あ』



明らかにしゅん、となってしまった冨岡様と、軽く吹き出しちゃってる師範。


しまった追い打ちかけたわ、フォローするつもりが。



『あ、あーでも楽しみだなー！ 冨岡様の美麗な剣技を、間近で見られるなんて！』


「………」


『いやお世辞じゃないですよ、そのジト目やめて下さい』



うちの師範が「滲み出ちゃう兄貴感」なら、冨岡様は「溢れ出ちゃう弟感」よ。

放っておけないタイプ。



「おい、とっとと始めンぞォ。ただでさえ水柱サマが遅過ぎて、時間ねんだかンなァ」


『煽る煽る』



他人様の御屋敷だというのに師範はずかずかと庭へ入って行き、私は慌てて、冨岡様の袖を引っ張ったのだった。












(何と言うか…………別次元だな)



まずはと始まった、師範と冨岡様の手合わせ。


一般隊士達に稽古をつける合間は、柱同士でも手合わせを行えというのが、岩柱様からのお達しで。



冨岡様が柱稽古に参加することにしたらしい、と聞きつけた師範は早速、手合わせを申し込まれた………というか、ほぼ押しかけたワケだ。



いつも毛嫌いしている風に見えるけれど、結局師範は、冨岡様の実力を認めているんだろうと思う。



だってほら。

何だか楽しそうだもんな、打ち合いも。


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