56 : 慰めついでに ページ17
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(………まあでも、無理がありますよ)
同じ名字ってだけじゃなく、どう見ても似てたし。
実物見たのは初めてだったけど、私でもすぐに気づくレベルだったし。
しばらくはお互い無言で、私は黙々と箸を進めていた。
別に怖くも気まずくもない。
私にとって師範との空間はいつでも、居心地の良い場所だ。
「………何も聞かねェのか」
やはり押し出されたような囁きに、さすがに1度箸を置く。
投げられた視線を、真っ直ぐに受けとめた。
『人には誰だって、言いたくないこともあるでしょう。………まあ………師範が私にどうしても話したい、頼むから聞いてくれとまでおっしゃるのなら、もちろん伺いますが』
そう答えた私を、師範はじっと見つめている。
……………やめて、妊娠しそう。
それを口走るのはさすがに控えた私を横目に、師範は後頭部をガシガシと掻いた。
「………ったくお前は」
呆れた声色はもう、いつも通りだったから。
『ふふふ。ホントにいいんですよ、師範。無理なさらないで下さい。そんな泣きそうな顔をされては、私も調子が狂います』
そうからかうように笑えば、師範の眉はきつく寄せられる。
溜息なんてひとつ、吐いてみせてから。
「チッ………アホ弟子に慰められるとはなァ………風柱も
あまりに嫌そうな師範のその様子につい、笑いが堪えきれなくなった。
『あははは………じゃあ慰めついでに、今夜は添い寝でもして差し上げましょうか?』
調子に乗った私のからかいが意外だったのだろう、師範は軽く目を見開いてから、思いきり吹き出す。
「ク、ハハッ…………おォ、そら是非とも頼むわァ。…………ただ今夜は、添い寝だけじゃ済まねェがなァ?」
窓辺から立ち上がり、こちらへと近づいてきて。
『………うぇ?』
師範の長い綺麗な指がするりと、私の頬を滑る。
想定以上のセリフと仕草に、思わず変な声を出した私にもう一度、クツクツと笑ってから。
冗談に決まってんだろアホォと、師範はいつものように、私の頭を撫でたのだった。
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ひよ(プロフ) - すみっことかげさん» すみっこさん、こんにちは! お忙しいのに一気読みまでして頂き、、申し訳なさとありがたさで泣いています…!ちょっと……師匠とは誰のことかわかりかねますが(すっとぼけ)、私もすみっこさんのお話を応援しておりますので、更新頑張って下さい♡ (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - はなちゃんさん» はなちゃんさん、こんにちは!コメントありがとうございます! すっごく嬉しいです♡ 「とっくに」まで読み返して頂いたとは……キャラ同士の掛け合いは意識して書いているので、そんな風に感じて頂けるのは本望です…!また友限のお話でお会いしましょう♡ (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 凜音さん» 凛音さま、はじめまして!コメントありがとうございます♡ 読んで頂いた上、そんな風に言って頂けて泣きそうです…! はい、私も凛音さまに新作通知を出せるよう、妄想に励みますね!(変態っぽくてすみません)またお会い出来ることを楽しみにしています! (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 那拓さん» 那拓さま、はじめまして!コメントありがとうございます嬉しいです♡ おお、原本の方もお読み頂いたんですか、、読みにくくて申し訳なかったですが(泣)、、そんな風に言って頂き本当に嬉しいです! (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» 本当に忙しい時だったのに、、読んでくれてありがとうございました(泣) そうね、師範の連載終えた頃にレッド2にコメ行ったんだよな、確か。あの頃は、まさかキミとこんな関係性(意味深)になれるとは思っていませんでした…!! 内容まで覚えててくれて愛しかねえ!! (2022年7月18日 16時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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