《前編》改）言えない師範と言わない継子【不死川実弥】

5 : 自分に何かがある前に ページ6

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『ど、どういう風の吹き回しなんでしょう、不死川様……!! ……………はっ、生意気な私の息の根を、今度こそ合法的に止められようと？！」



唯一浮かんだそれを震えながら口にすれば、黙れェ、と低い声と同時に、またも鷲掴みにされる頭。



悲鳴あげそうになったけど、ガマンよガマン。

お館様の御前だもの……………って、いやでも痛ってぇぇぇぇ!!



「Aは相変わらず明るいね。しかし鬼と戦う時は、本当に頼もしい剣士だ………だから実弥も認めている」


「………風の呼吸の使い手として、このAは、私の次に実力があると踏んでおります。ですから今の内に、もっと技を極めさせたいと思うのです」



今お話になられてんのはどちら様？とツッコミたい程に丁寧な言葉を操る不死川様を、頭を擦りながら見つめる。



「…………………私に、何かある前に」



重い口調で出された結論に、思わず眉を寄せた。




………………何それ。




「そうだね………もちろん私は、実弥の実力に信頼をおいている。そう簡単に、風柱は負けない………しかし何があるかわからないのが、鬼との戦いだ。………A、君ならその意を汲めるだろう？」


『おっしゃることはわかりますが………』



力を認めて頂いているのは、正直嬉しい。



でもやっぱり胸は苦しくなってしまう。

だって「私に何かある前に」なんて……………この不死川様が。



複雑過ぎる気分のまま、思わず下を向いた私に再び注がれる、あの柔らかな声。



「それにAは本来なら、柱となる要件も満たしている。実弥の足元にも及ばない、と固辞し続けてはいるけれど………もったいないのは事実だ」





そうなんです。


つい最近、(命からがら何とか)倒した鬼が、下弦の陸だったんだよね……



でも言うて下弦、しかも陸とかさ。

十二鬼月ギリ過ぎて、ちょっと胸は張れない件。


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