番外編 3 : ご都合(が過ぎる)血鬼術 ページ48
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任務明け、早朝。
相棒の鎹鴉が仕入れてきた情報に慌てふためき、向かった先は。
『……っ、うちのっ……うちの師範はご無事ですかっ?!』
「Aさん、お静かに!!」
飛び込んだ蝶屋敷で早速、アオイちゃんから注意を受ける。
いやごめん、師範の一大事って言うから!!
「あらあら、お早い。さすがはAさんですねえ」
診察室から覗いたその表情に切羽詰まったものがないのを確認し、思わず壁に手をついた。
『しのぶ様、焦らせないで下さいよ……』
「まあでも、一大事なのは確かかと」
ねえ不死川さん?と視線を診察室の内側へ戻したしのぶ様の顔は、何故か笑いを堪えているようにも見え。
何、めちゃくちゃ気になる。
『失礼しますよ師範!』
戸を大きく開け放った瞬間「あいってくンなァ!」という高、…………あれ?
高い声。
『こ、れは………』
「いわゆる、ご都合血鬼術というものでしょうか」
やれやれですと笑うしのぶ様に、おぼつかない舌打ちを投げてみせたのは。
『師範………随分と小さくなられて……』
「あ"?!」
『声が高くて怖くないですごめんなさい』
いつものように凄んでみせたところで、どう見てもせいぜい2、3歳児だ。幼児だ。
『え?これ中身は?』
「問診した感じでは、中身は21歳の不死川さんのままかと」
『あー見た目は子供、頭脳は大人ってやつ』
「クショがァ……!」
『ん"っっっふ、』
今あれですよね、お得意の「クソがァ」って言ったんですよね!
『可愛くて死にそう』
「るしェ!」
『ん"っ………師範、ちょっと「風の呼吸」って言ってみて下さい』
「………かじぇのこきゅう」
『アッ……!』
やめて吹く、むり。可愛いがすぎる。
馬鹿にされている気分なんだろう、小さなお口からはやはりキレのない舌打ちが発せられる。
「血鬼術をかけてきた鬼は既に斬ったらしいですし、効力はせいぜい1、2日といったところでしょう。いつぞやのAさんと同じです」
『ありましたねー、そんなこと』
私も、こういう状況になったことがある。
あの時は師範が抱っこしてくれたり、ご飯食べさせてくれたり…………まんまお母さんだった件。
「なのでこのまま、屋敷に帰って頂いて大丈夫です」
しのぶ様に頷いてから、私の腰元までしかないその影に問いかける。
『師範、抱っこします? ………いっった!』
幼児に全力で足を踏まれました。
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