《前編》改）言えない師範と言わない継子【不死川実弥】

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『…………そうきたか』



ワンチャンいつもと同じかも、という淡い期待はそれでも、真新しい生地を広げた所までは抱いていた。



あのゲスメガ、じゃなかった前田さんは、女性隊士の間では有名人だ。


縫製係としての腕は確かに良い、らしい。

ただ女性隊士向けのデザインが問題で。



「おィ、どうだァ」



押しつけられた隊服デザインがもしも「恋柱モデル」だった場合、師範は前田さんをシメて下さるらしい。


むしろご自分は積極的に「恋柱モデル」じゃないか、というツッコミは頑張って飲み込んだ。

私えらい。



羞恥より、師範はこの隊服を見たらどういう反応を示すのかという好奇心が勝ち、部屋の戸をからりと開ける。



「………普通じゃねェの」



確かに正面からのパッと見は、その感想になるだろう。

別に胸元ガバァなわけでも、太もも丸出しな丈でもない。



でもあの前田さん、やっば変態だ。


………エrい妄想とかも絶対、バリエーション豊富に違いない。(震え)



『確かに一見、普通なんですけど』



身体の角度を変え、側面を師範へと向ける。



「………」


『すりっと？ とか言うんでしたっけ。すんごい切れ込みが入ってて』



膝上ゆうに30センチ近く、際どい部分まで縦に入れられたそれ。

要するに、ほんの少しでも動けば脚が丸見えなのだ。



「そうきたかァ……」


『セリフがデジャヴ』



師範は顔を手で覆い、大きな溜息をつく。



「………念の為言っとくがそれ………外で着ンなよ」


『着るわけないじゃないですか。私、師範と違って露出趣味ありませんし』


「あ？」



誰が露出狂だァ、とすごんでくる師範。


いや「狂」までは言ってない。

「趣味」で止めといたじゃないですか。



『だって師範、いっつも胸元は「恋柱モデル」ですし』


「オレは男だからいンだよ」


『破廉恥な胸筋丸出しですし』


「人様を破廉恥言うなァ」



ビシ、と降ってきたデコピンの痛みに、恨みがましくそこを抑える。

師範はそんな私を見て、小さく笑った。



「任務の報告に、本部行ってくるわ。ついでに新しい隊服、石田に頼んできてやらァ」


『え、師範優しい！ じゃあこれも一緒に、』



返してきてもらっていいですか？と、笑顔でお願いしてみれば。



「………」


『いや屋敷の中でも着ないです』



私の結論に返された舌打ちに、くすぐったく笑いながら。


それを着替えるべく、師範を部屋から追い出した。


終

番外編 3 : ご都合（が過ぎる）血鬼術→←番外編 2 : 破廉恥言うなや

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