《前編》改）言えない師範と言わない継子【不死川実弥】

36 : 照れないで下さいよ　 ページ37

side 不死川実弥






Aの様子を確認した後、一度部屋を出て行った胡蝶が、湯呑みを手に戻ってきた。


戸を開けて室内を見渡し、小さく吹き出す。



「まあまあ皆さん………これではまるで、柱合会議のようです」


「チッ…………呼んでねェヤツまで来やがった」


「………それは図々しいな」


「お前がなァ?!」



心外、と言わんばかりに眉を寄せたのは、水柱の冨岡だ。



Aが目覚めたとの一報を関係各位に知らせるべく、2羽の鎹鴉に伝言を託したまでは良かった。


だが何故か、駆けつけてくると予想したメンツ以外まで現れたのだ。(主に冨岡と冨岡と冨岡)



「俺は…………Aとは、仲が良い」


「言いきったな冨岡。その自信はどこからきているのか、皆にわかるように日本語で説明しろ」



伊黒に問い詰められ、冨岡は考え込むような素振りを見せる。



「………会話になる……」


「だっはっはっはっ……!! そらお前、Aだけじゃね？ 喋ってんの」



宇髄の指摘は多分正しい。

確かに、オレや伊黒がやたらと苛つかされる冨岡とも、Aは交流しているようだが。



『あははは…………でも皆様、お忙しいのにありがとうございます。ご心配おかけしました』



まだ声は掠れているが、Aは話すことも問題ないようで、胡蝶と共に胸を撫でおろしたところだ。



「フン。お前に何かあれば、甘露寺が可哀想だからな」


『そのぶれない所が大好きです、伊黒様』


「うふふふ………もちろん私も心配したけれど、それより不死川さんよ！ ずーっとAに、付き添っていたもの!」


「確かに。この不死川さんがなりふり構わず、でしたよ？ Aさん」


「チッ………余計なこと言ってンじゃねェ……!!」



気恥ずかしいことを改めて暴露し始めた女2人に釘をさしても、ニヤニヤされるばかり。



……………クソがァ。



『ひひひ、師範ったら照れないで下さいよ』



ぐふ、と妙な笑いをしたAの頭を、照れ隠しで掴もうとすれば。



「………不死川さん。Aさんの傷はまだ、完治してらっしゃらないのですが？」



胡蝶が青筋なんぞ浮かべやがったから、さすがにその手は引っ込めておいた。



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