《前編》改）言えない師範と言わない継子【不死川実弥】

3 : 黙ってついて来い ページ4

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「久方だな、まだ生き延びてて何よりじゃねェの」



やっと開放された頭を涙目でさすっていれば、投げられた挨拶。



『ええ。私は不死川様より先に、死ぬワケにはいきませんので』


「ハ、そら悪くねェ心がけだ………んじゃ早速始めンぞ。全員まとめてブチ○してやらァ」



いや頭を垂れて蹲ってる部下に向かって、なんつう言い方をなさるんでしょう、このお方。


もう伏せ字になっちゃってるよね、さっきから。



真っ青になった同僚を横目に見ながら、不死川様にはバレないように、心の中で溜息をついた。














「いつまでも床舐めてんじゃねェ」と竹刀でドスドス脇腹を突かれ、渋々起き上がった。



「このまま本部なァ」


『私も、ですか？…………特にお呼び出しは、かかっておりませんが……』


「お館様とそういう話になってっから、お前は黙ってついて来い」


『何ですかそれ、亭主関白的な』



息も絶え絶えにツッコんだ私の頭に、また大きな手が向かってくる。

今度こそ頭カチ割られると、残る力を振り絞って逃げれば。



「ほォ………あの稽古の後にそンだけ動けるとは、さすがはAAだなァ？ 物足りンかったかァ」


『そんっっなワケないじゃないですか、お腹いっぱいですよもう。残された最後の力です』



そら立派なモンだ、と鼻を鳴らして、不死川様はスタスタと先を歩いて行く。


もつれそうになる脚を懸命に動かし追いかけていれば、本部へと辿り着いた。





大きなお屋敷に広いお庭。

敷き詰められた真っ白な玉石を踏みしめながら、つい最近ここで行われたという、柱合裁判の話を思い出す。



(……不死川様からしたら、屈辱的………だよね)



誰よりも鬼を憎んでいる方が結果的に、自ら鬼の娘の存在を周囲に認めさせてしまったと聞いたのは、同期の恋柱から。



「殺」と物騒な文字の入った、白い羽織の大きな背を見つめながら、そんなことを考える。

分不相応なことだけども。



辿り着いたお座敷、不死川様のすぐ脇に控えるように座ったところで。



お館様がお成りが告げられた。


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