《前編》改）言えない師範と言わない継子【不死川実弥】

26 : 風柱の秘蔵っ子 ページ27

side 宇髄天元






(………そんじゃ頼むぜェ、ウチの(・・・))



最後にそう言いおいて、不死川は帰っていった。


ったく……………素直なんだか、そうじゃねんだか。






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『………っ、ぐっ……!』


「A!!」



陸の兄の鋭利な鎌の先が、Aの真っ白な頬をえぐるのが見えた。


やめろ下衆野郎、年頃の女の大事な顔……………傷つけてんじゃねえ!!



「っ、音の呼吸・伍の型、鳴弦奏々!!」



己の命などもう、惜しくはない。


嫁達も全員助けられた、だから後はAとアイツら3人を、何とか。



…………………せめて、命だけでも無事に。




『………朝になったら、みんなで仲良く蝶屋敷行きですよ!! 宇髄様!!』



お前ら気合い入れ直せやァ！と、その師範も顔負けな叱咤をガキ共へとばしたAに、思わず口角が上がる。



いや、ド派手に威勢がいいな。

さすがは風柱様の秘蔵っ子。



「よーっしゃ、無事に帰ったらお前の好きなモン、何でも奢ってやっからなA!!」


『え！ マジすか、じゃあフグ刺しとビフテキ！』



おいおい、バカでけえ声で調子いい返事しやがってお前は。


やめろや、こんな状況にまで追い詰められてんのに笑っちまったじゃねえか、ったく。



「………っ、「譜面」が完成した!! 勝ちに行くぞォォ!!!」



先程の時間稼ぎで、奴らの攻撃は全て見切った。

「譜面」さえ仕上がりゃ、後はこっちの。



隙などロクにない速さで繰り出される兄の斬撃を、Aと代わる代わる、交互に捌いていく。


当然、狙うは頸。

だがあと一歩の所で、刀はそこへと届かない。



Aも毒の影響が相当出てきている、早く決めなけりゃ最悪………………………全滅も。



「っ、宇髄さん!!」


「止まるな、跳べェェ!!」


『………っ、いっけェェ炭子!!』



後方から現れた竈門へと、オレ達は期待の全てをかけ。


各々、声の限りに叫んだのだった。



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