《前編》改）言えない師範と言わない継子【不死川実弥】

16 : 通称・爽ちゃん、オス。 ページ17

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「……カァァァァ!! A！ 今日モ無事カ?!」


『っ、シッ！ 爽ちゃん、声小さく……！』



潜入先の「ときと屋」で与えられた部屋の小窓、朝日と共に現れたのは、我が師範の鎹鴉・爽藾。

通称・爽ちゃん。オス。



好物の木の実を手に乗せ、入ってくるよう促せば、どことなく嬉しそうだ。


お腹減ってるんでしょ、今日はどこから飛んできたのさ。



『ねー爽ちゃん、毎日ここまで来んの大変でしょ。私から師範に言おうか?』



音柱・宇髄様と庚の隊士(何故か男子3人)と共にここ吉原へ到着したのは、10日ほど前。


運良く奥方様達が潜入されていた店に分かれて引き取られ、それぞれ情報収集をしている。




宇髄様のおっしゃる通り、確かにここには鬼の気配が微かにした。

奥方様達が消息を断ったのも、きっと鬼の仕業だろう。


早く見つけて差し上げなければ。


　
「大丈夫ダ！ 実弥、Aガ心配デタマラナイ！俺ガ確認スンノガ、一番早イカラナ!!」


『いや何も、毎日じゃなくてもさ……』


「風花ヲ実弥ニ飛バスト、Aニ何カアッタ時ニ困ルッテ、実弥ハ言ッテル！」



風花というのは私の鎹鴉、可愛いメスで仕事もできる。


まあ確かに、今は宇髄様への定期連絡で忙しくさせてるしなー。

師範の言い分も、わからなくはないけど。



「………実弥、Aガ大事。ダカラA丿コトハ、俺ガ報告シテヤラァ」


『アッ…………何て主人思いなの爽ちゃんてば………よしよし、もっとお食べ？』



ガツガツ、と木の実を食べる爽ちゃんの頭を撫でれば、いつも通り艷やかな毛並み。



師範って動物好きなだけあって、毛づくろいとか餌やりとか、鴉のお世話がとにかくマメなのだ。


爽ちゃんいっつもツヤツヤしてるから、風花も羨ましがって、師範に毛づくろいおねだりしに行くもんな。(そして私が師範に叱られる件)




動物に対してだけじゃなく、師範は誰かのお世話をすることに慣れてるようにも思う。





……………もちろん師範のご家族の事なんて、私にはわからないけれど。


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