《前編》改）言えない師範と言わない継子【不死川実弥】

24 : このために ページ25

side 宇髄天元






「音の呼吸・肆の型、響斬無間!!」



上弦の陸が繰り出した血鬼術から竈門炭治郎を庇い、後方へ投げ飛ばしながら斬撃を放つ。

続けて畳み掛けようとすれば、そこには。



(………消えた!!)



すぐ目の前に居たはずの、陸の兄の姿がない。

嫌な予感と共に、上方を振り仰いだ。



「……っ、雛鶴ーーっ!!」



屋根の上で鬼に捕らえられ、鷲掴みにされた雛鶴の顔が、苦しそうに歪んでいる。


解毒剤を飲ませたからといって、すぐに本調子に戻れるはずもない。

なのにオレを援護しようと、あいつは。



(クソッ！ 邪魔だ!! 帯がっ……!!)









ここ吉原に巣食っていたのは、上弦の陸だった。


兄妹らしき、2体で1魂と思われるこの鬼は、2体同時に首を斬った状態にしなけりゃ消滅しねえっつう、全くもって迷惑な奴らしい。

だから今、地味に苦戦中って所だが。



四方八方から飛んでくる帯に足留めを食らい、雛鶴の元へと跳ぶのを邪魔される。



……………………まずい。



「やめろーーーっ!!」


『………っ、風の呼吸・伍の型、木枯らし颪!!』



ぶわ、とそれはそれはド派手な暴風が、屋根の上で吹き荒れる。

同時にそこから雛鶴が素早く逃げ出したのが見え、助かった、と息を吐いた。



「感謝すんぜ、A!!」


『このために貸し出されたんですから、トーゼンです！ いきますよ、宇髄様!!』



身体のそこかしこから出血しながらも、うらァ！とその師範に似た勇ましい声を上げ、連続で斬撃を繰り出すAに加勢する。

陸の兄の方を、追い詰めるために。



2体1魂とはいえ、本体………つまり本当に強えのは兄の方で、妹はそこまでではなかったから。



………………その妹は、あいつら3人で何とかしてくれりゃありがてえが。




正直Aと2人がかりでも、こっちはキツイのが本音だ。


地味で格好ワリイったらねえわ、糞が。



・

25 : 命さえあれば→←23 : 聞こえた気がした

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す