38 : 何故そんな顔をするの ページ39
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部活のない放課後、逆に練習のある彼氏を待つために、図書室へと向かった。
前々から好きな作家の本を手にした後、バスケに関するものも探してみようと、背の高い本棚の間を移動する。
『あ、』
「………よォ」
珍しい先客は、不死川だった。
1人きりで居る彼と出くわすのは久しぶりで。
『………元気?』
「いつも部活で顔見てンだろが」
『あ…………うん。そうだけど』
はは、と笑ったつもりの声は、図書室という状況を差し引いても、どうも小さくなってしまう。
何となく気まずさを覚え、棚に並んだ本の背表紙を眺めた。
「………もしかして、ビー部待ちィ?」
『ん、まあ…………そんなとこ』
彼氏の属するラグビー部は、練習日が多い。
こういう日は基本、校内のどこかで待つことが多かった。
しばらく互いに無言のまま、棚に目を走らせていたものの、結局タイトルは全く頭に入ってこない。
お前さァ、と音量が落とされた低い響きに、我に返る。
「………先輩のこと、好きだったンじゃねェンかよ」
「先輩」とは当然、私がとっくにフラれた人のことだろう。
1年生の頃は彼からも時折、それをからかわれていたから。
『好き…………だったよ』
「あァ?」
『でもフラれちゃったんだから、しょうがないでしょ』
「フラれた、って……」
仲の良い後輩だからといって、宇髄先輩は私とのことを、彼に話していたわけではなかったらしい。
そういうところは、真面目で律儀な人でもあった。
情報を整理したらしい不死川は、小さく舌打ちする。
「………ンだよ、それェ……」
どこか悔しそうにも見えた。
その理由を私が今更考えるなど、自意識過剰にも程があるだろう。
くしゃりと前髪を強く握ってから、不死川は溜息をつく。
「………あんなに近くに居たっつうのに」
肝心な事は聞けてねェのな、と何故か泣き出しそうにも見える顔をした不死川に、何を言えば良いのかなんて。
……………………………私には、わからなかった。
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ツナミカワ(プロフ) - ひよさん、ツナミカワです。またまた涙無しでは見れなかったです。最初三角関係だったのに天元にはちゃんとはっきり言えて、そこから実弥との進展がどうなるか楽しみながら見ていました。相変わらず感動させてくれる作品をありがとうございます😊 (2時間前) (レス) @page50 id: 8933f39901 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉ちゃん、いつもコメありがとうございます♡ イチゴのようにちょっとでも甘酸っぱくなっていれば嬉しいです!! (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - よっしーさん» よっしー様、初めまして!! コメのおねだりにお応え頂き本当にありがとうございます♡ すごく嬉しいです!! なんと、、推し変の可能性とは……恐れ多くて震えますが、そんな風におっしゃって頂き浮かれちゃいます♡ 新作も、またお時間あれば読んでやって下さい!! (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 京華さん» DK言うてたのが、甘酢でしっくり収まった次第です(笑) 天元さまは憧れの先輩であり、自慢のお兄ちゃんでいてほしい願望でした♡ つかこの話、オチは実弥な??(笑) いつもコメありがとう!! めちゃくちゃ励みになりました♡ (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» もう……わざわざ2回もコメありがとうございます(泣) 愛しかねえです!! ここぞと言う時に使いたいのが、伊黒さんと天元さまなのが通常運転(笑) ちょっとでもきゅんしてもらえて良かった♡ 藤の花も宜しくです♡ (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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