30 : 本当にごめん ページ31
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朝から何となく、みんなソワソワとしていたバレンタインデーも放課後。
そういう私も、どうしても緊張からは逃れられなかった。
それでも。
(もう、決めたことなんだから)
懸命に自分を鼓舞し、同じく部活を終えたらしいその銀の後ろ姿を追いかけた。
『………っ、宇髄先輩!』
同じ男バスの先輩2人と歩いていた宇髄先輩は、私の声にすぐ振り返る。
「おー、どしたA?」
『ちょ、っと……いいですか……?』
「何だよ、んな他人行儀に」
いや他人だろ、と笑う他の先輩達に軽く手を上げてから、宇髄先輩は私の方へと歩いて戻ってきてくれた。
「カワイイ妹からのお誘いは、断われねえよなー」
ポンポンといつものように私の頭を撫でてから、どした?と重ねて尋ねる。
勘のいい先輩のことだ、私が呼び止めた理由にも、気づいているかもしれない。
『あの、これ』
後ろ手に持っていた包みを、思いきって差し出した。
友達に好評だったブラウニー、もちろんきちんとラッピングもしてある。
「お。もしかしてチョコ?」
『……私が作ったブラウニーなんです。良かったら………受け取って、下さい』
声が少し震えたのは、緊張のせいか寒さのせいか。
予想では、すんなりと受け取られるだろうと思っていた。
「妹からでも嬉しいわ」なんて、いつものように捉えどころのない笑顔を見せるんだろうと。
そうしたらちゃんとあの
………………なのに。
「………A」
包みはまだ私の手の中、それから先輩の静かな声。
「これは兄ちゃん宛て?……………………それとも、」
本命?と尋ねられたワードに数秒迷った後、私はひとつだけ頷いた。
そっか、とあくまで優しく相槌を打つ先輩に、急に泣きたくなる。
「……………ごめんな。だったら受け取れない」
本当にごめん、と頭まで下げたこの人への想いに、自分なりに決着をつけたかった。
恋と憧れの違いなんて、私にはまだ良くわからない。
それでも今、私が先輩に受け入れられないことだけは、理解できたから。
『………大丈夫だよ、お兄ちゃん。ごめんなさい…………困らせて』
何とかそれだけを伝え、一人、踵を返したのだった。
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ツナミカワ(プロフ) - ひよさん、ツナミカワです。またまた涙無しでは見れなかったです。最初三角関係だったのに天元にはちゃんとはっきり言えて、そこから実弥との進展がどうなるか楽しみながら見ていました。相変わらず感動させてくれる作品をありがとうございます😊 (2時間前) (レス) @page50 id: 8933f39901 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉ちゃん、いつもコメありがとうございます♡ イチゴのようにちょっとでも甘酸っぱくなっていれば嬉しいです!! (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - よっしーさん» よっしー様、初めまして!! コメのおねだりにお応え頂き本当にありがとうございます♡ すごく嬉しいです!! なんと、、推し変の可能性とは……恐れ多くて震えますが、そんな風におっしゃって頂き浮かれちゃいます♡ 新作も、またお時間あれば読んでやって下さい!! (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 京華さん» DK言うてたのが、甘酢でしっくり収まった次第です(笑) 天元さまは憧れの先輩であり、自慢のお兄ちゃんでいてほしい願望でした♡ つかこの話、オチは実弥な??(笑) いつもコメありがとう!! めちゃくちゃ励みになりました♡ (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» もう……わざわざ2回もコメありがとうございます(泣) 愛しかねえです!! ここぞと言う時に使いたいのが、伊黒さんと天元さまなのが通常運転(笑) ちょっとでもきゅんしてもらえて良かった♡ 藤の花も宜しくです♡ (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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