29 : 本命の、友チョコ ページ30
・
姉に宇髄先輩の話を聞いてもらってから、1ヶ月ほどの間。
私は自分なりに考え、ひとつの決意を固めていた。
「今日は何の日か知ってっかァ?」
『不死川おかえりー』
いつもの昼休み、お弁当を食べ終えしのぶ達とお喋りなどしていれば、頭に乗せられた大きな手。
学食から帰ってきたらしい、男友達だ。
『バレンタインだね』
「オレ朝から、ずっと待ってンだけどよォ」
『うん。だからちょうど良いトコに来たな、って』
はい、と差し出した大きめの容器には、友チョコ用のブラウニー。
たくさん焼いて切り分け、可愛いピックを刺して持参したものだった。
周りに座る女友達はすでに、それを次々と口に放り込んでいる。
「あァ? テメ、その他大勢と同じ扱いすンなや」
『何その他大勢って。みんな大事な友達じゃん、失礼な』
「まったくです。Aの親友を名乗るのは、不死川くんだけではないのですよ」
私の反論としのぶの言い分に軽く舌打ちしてから、不死川も緑のピックをつまんだ。
「………美味ェ。お前の手作り?」
『どう見てもプロの出来栄えじゃないでしょ』
わかるクセに、と眉を寄せてみせれば、不死川はクツクツと笑う。
「素人のレベルってンなら、高ェんじゃね?」
さり気なくくれた褒め言葉には、素直にお礼を言った。
もう一つ、とブラウニーに手を伸ばしかけた不死川へと、別の包みを取り出す。
『気に入ってくれたんなら、これもあげる』
ただの容器なんかじゃなく、きちんとラッピングされたそれを見て、不死川は瞬間動きを止めた。
「………ちゃんと本命用あンなら、最初から出せやァ」
『本命の、友チョコね。いつもすっごくお世話になってるから、あえての別枠』
「ったく、可愛くねェ」
私の言葉に鼻を鳴らして、でも不死川は包みを受け取る。
「ま、貰ってやンよ。本命の友チョコっての」
そうしてもう一度笑ってから、私の頭を軽く叩いてみせた。
・
189人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ツナミカワ(プロフ) - ひよさん、ツナミカワです。またまた涙無しでは見れなかったです。最初三角関係だったのに天元にはちゃんとはっきり言えて、そこから実弥との進展がどうなるか楽しみながら見ていました。相変わらず感動させてくれる作品をありがとうございます😊 (2時間前) (レス) @page50 id: 8933f39901 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉ちゃん、いつもコメありがとうございます♡ イチゴのようにちょっとでも甘酸っぱくなっていれば嬉しいです!! (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - よっしーさん» よっしー様、初めまして!! コメのおねだりにお応え頂き本当にありがとうございます♡ すごく嬉しいです!! なんと、、推し変の可能性とは……恐れ多くて震えますが、そんな風におっしゃって頂き浮かれちゃいます♡ 新作も、またお時間あれば読んでやって下さい!! (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 京華さん» DK言うてたのが、甘酢でしっくり収まった次第です(笑) 天元さまは憧れの先輩であり、自慢のお兄ちゃんでいてほしい願望でした♡ つかこの話、オチは実弥な??(笑) いつもコメありがとう!! めちゃくちゃ励みになりました♡ (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» もう……わざわざ2回もコメありがとうございます(泣) 愛しかねえです!! ここぞと言う時に使いたいのが、伊黒さんと天元さまなのが通常運転(笑) ちょっとでもきゅんしてもらえて良かった♡ 藤の花も宜しくです♡ (2022年4月17日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ