8:まだ甘いのは百も承知 ページ8
side 不死川実弥
本当は夜が明けるのを待って、近くの街にでも送り、別れるつもりだった。
「家には帰れない」というのは多分、親に売られたのだろう。
生活に困り、子供を売る親など別に、珍しくも何ともないのだ。
昔の生家だって、母親が一人でも俺達を守ってくれていたから、たまたまそれを免れていただけで。
あの糞親父と似たりよったりの母親だったなら、妹達もきっと、同じ目に合っていたに違いない。
「………おい」
所在無さげに立ったままのそいつに声を掛けると、細い肩が小さく跳ねた。
「まずは湯を使え。それから飯だ」
短く指示すると、おずおずと俺に目を合わせてから、素直に頷く。
それを確認してから、隠を呼んだ。
「そいつに風呂の世話をしてやってくれ。すまねェが飯も」
「承知しました」
「……声は出ねェが、意思の疎通はできる」
俺のあの問いかけに、明確な返事はなかった。
口を数回はくはくとさせ、喉元を小さな手で押さえたその表情に浮かんだのは、戸惑い。
声が出ない、喋れもしないこんな子供が、すぐにたった一人で生きていけるはずもないのは明らかだ。
そう結論付けた瞬間、他にも選択肢はあったであろうものを。
のこのこと連れ帰った自分はまだ相当、甘さがあるのだろう。
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ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» 大変真面目なコメントを頂き、(私が)恥ずかしくなっております…!! 読みやすさは意識したところなので、褒めて貰えて嬉しいです!! しみじみと「これ過去イチ好きだわ」と言われた時はガッツポーズでした。いつもありがとう!! (2021年11月24日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - ひこさん» ひこさま、コメントありがとうございます!! そう言って頂けてすごく嬉しいです! 次作は年明けになってしまいますが、、またお時間あれば読んでやって下さいませ!! (2021年11月24日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 完結おめでとうございました。私が思う風柱様そのものでした。原作に近いしんどさのお話。読んでいて本当に苦しかったです。重たいお話なのに、とても読みやすく、一つ一つの言葉選びに脱帽しております。大好きなお話がまた一つ増えました。 (2021年11月24日 17時) (レス) id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あいすさん» あいすさん、コメもメッセもありがとうございます!! こんなテンションの話なのに、、気に入って貰えたみたいで嬉しかったです!! あいすさんも更新頑張って下さいね! (2021年11月24日 15時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます!! 続きが読んでみたいと言って頂けるのは、本当に本当に光栄です!! ……なんですが……この話は、ここで終わるのが納まりが良い気もしておりまして。。ご期待に添えず、本当に申し訳ございません…!!(土下座) (2021年11月24日 15時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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