甘やかな唇【不死川実弥】【冨岡義勇】

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「何見てンの?」



一緒に私のアパートへ帰って、店長の美味しいビーフシチューで夜ごはんにして。


先に入らせてもらったお風呂上がり、あれこれとお手入れを済ませてから、ベッドに寝っ転がっていた。

同じくバスルームから、髪を無造作に拭きながら戻ってきた実弥が、冷蔵庫を開けている。


「ビールは飲むなよ未成年」


「こんだけ買い置きされてっと、誘惑ヤベェなァ」


チ、と小さく舌打ちはしながらも、大人しくお茶のペットボトルを取り出した。



ベッドの端へと身体を寄せてやれば、当たり前、というように自然な動作で、隣へと寝転んでくる。



「今日の写真。見る?」


「あァ、結婚式の」


そーそー、と一応差し出したスマホは受け取られ、代わりに用意された腕枕には、遠慮なく頭を乗せた。

綺麗な鎖骨の辺りにすり寄るようにして、一緒に画面を覗き込む。



………そこには幸せそうに微笑む、大好きな従姉妹。



「キレイでしょ、お姉ちゃん」


「Aさんとはタイプちィと違うけど、確かに
　美人だなァ」


「お姉ちゃんとは呼んでるけど、姉妹じゃないから
　ね。さすがにそこまでは似てないかも」


まあなァ、と相槌を打ちながら、実弥は画面をスワイプしていった。


「お、これダンナさんかァ」


「うん、ぎゆさん。カッコ良いよねー、正統派のイ
　ケメンって感じ」


「……ほーん……ぎゆさんねェ…」


何か気に食わねェなァ、と眉を寄せた実弥に、従姉妹に言われたことを思い出して苦笑する。


「……オトナ、っつう感じがよ。なんだかなァ」


「そりゃ私より6つも上だもん。オトナでしょ」


事実を口にすれば、ふん、なんて鼻を鳴らす。



(………わかってるよ?)



一年付き合ったって、お互いの歳の差は変わりはしないから。


私がどんなに「今の実弥が好き」と言っても、こういう時には少しだけ、気にすることも。


私も同じ。

お互い様なんだけど。



「ま、でもよォ……楽しみがあるよなァ、Aさ
　んにゃ」


楽しみ?とその顔を見上げれば、いつもの不敵な笑顔。


「……オレがオトナになる過程、っての、見れンだ
　ろ?」




それはつまり。

……彼が本物のオトナになるまでを見守っていいということ、なんだろうか。



「……なに、プロポーズ?」


「それはさすがに、稼ぐようになってからなァ」


生意気な唇が語った未来がくすぐったくて笑いながら、それを捕まえてみたのだった。



「甘やかな唇」 完

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